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普通は走り出す(2018)

MOOSIC LAB 2018 【長編部門】審査員特別賞 受賞作品/サードウインドウフィルムズ 2018年度日本映画ベストテン第2位

『普通は走り出す』

出演:渡辺紘文、萩原みのり、古賀哉子、加藤才紀子 、ほのか、黒崎宇則、永井ちひろ、久次璃子、平山ミサオ、松本まりか

監督・脚本:渡辺紘文|主題歌/劇中歌 トリプルファイヤー|撮影監督:方又玹|音楽監督:渡辺雄司|企画:直井卓俊|モノクロ|STEREO|100min

東京国際映画祭を始め、海外の映画祭に多数出品してきた渡辺紘文監督が奇才・吉田靖直率いるトリプルファイヤーの楽曲から着想を得て作り上げた、映画制作に悩み苦しみ毒を吐き続ける映画監督の日常。古賀哉子、萩原みのり、松本まりかなど美しき女優陣にもご注目。

◎渡辺紘文(わたなべ・ひろぶみ)

1982年栃木県生まれ。2013年、実弟の映画音楽家・渡辺雄司とともに映画制作集団大田原愚豚舎を旗揚げ。『そして泥船はゆく』(13)『七日』(15)『プールサイドマン』(16)『地球はお祭り騒ぎ』(17)がデビュー以来4作連続で東京国際映画祭に出品されるなど国内外で高い評価を獲得している。

◎トリプルファイヤー

吉田靖直(Vo)、鳥居真道(Gu)、山本慶幸(Ba)、大垣翔(Dr)で結成。今までに4枚のアルバムを発表。「高田馬場のJOY DIVISION」「だらしない54-71」などと呼ぶ人もいた。ソリッドなビートに等身大の歌詞をのせていてかっこいい。人気がある。メンバーはみな性格が良く、友達が多い。

◼︎審査員講評

国内外の映画祭で蛮名を轟かせる異才・渡辺鉱文の『8 1/2』(=悩める映画監督の自意識地獄めぐり)――でありつつ、トリプルファイヤーの楽曲(既成曲)が歌詞の意味も含めて完璧に組み込まれている劇構造にびびりました。脱力&混沌の自分ネタに見せて、実はフィクショナルなパズル的構築力がバキバキに発揮された一本かと。しかも作家としての個性は破格。傑作だと思います。ーーー森直人(映画評論家)

自分でも何が面白くて、何が魅力なのか分からないけど、観てしまうタイプの映画があるけど本作はまさにそういう作品です。白昼夢というか「うる星やつら ビューティフルドリーマー」じゃないけどずっと終わらない夢を見せられているみたい。内輪ネタてんこ盛り、「映画とは何か」問うメタ映画モノ+中年モラトリアム真っ只中、ダメ人間映画のような印象だけどそういう楽な言葉で片付けるのも違う気がする。突き抜けているのはやっぱりトリプルファイヤーの音楽。劇中でも「トリプルファイヤーの音楽はそれだけで世界観が完結しているんで~」みたいな言葉があるけど「その通り!」と激しく同意してしまいました。あと、渡辺紘文監督の本当にダメで、ボンクラで、憎たらしい振る舞い、演技が底なしに不快ですげえなこの人と思いました。やはり映画って疑似体験が醍醐味じゃないですか。戦争や災害の疑似体験もいいけど本当に「嫌なやつ」の疑似体験も出来るって、いやあ映画って本当にいいものですねえ(淀川長治風に)ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

トリプルファイヤーの楽曲の要素が映画の中でいきてた。加えてドラクエをかじってて良かったと思う瞬間の訪れ。手紙をもらった辺りからの面白さが抜群で、『普通は走り出す』というタイトルも良い!ーーー下北沢映画祭実行委員会

リフレインする音楽とその言葉とが、繰り返される映画監督の日常とリンクしていて非常に効果的だったと思います。素晴らしかったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

インタビューパートの爽快感たるや。贅沢な女優の使い方には思わず笑ってしまう。渡辺監督の映像作家としてのクセと、トリプルファイヤーの音楽的なクセが絶妙な位置で混ざり合っている。冒頭の4分間、新宿の街並みを垂れ流し始めた時点で、この後何を見せられるんだろうとドキドキした。ーーー石田(元町映画館)

作家の実力、底力が発揮されている作品でした。全体を覆うシニカルな視線が、観客の後ろからも見られているような、カメラで世界を覗き続ける本物による作品なのだな、というのがわかります。映画製作に悩む自分語りパターンの映画、全然好きじゃないんですけど、すごい良かったです。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

誠実、かつ正直な作品です。閉塞した主人公が世間とぶつかりながら、それでも変わらぬ日々を歩いていく。その後ろ姿に力強さと寂しさを感じて、グッとくるものがありました。本作の瑕疵というのではなく、この手の自己言及的な作品が自己と他者との関わりを描く作品と対比されたとき、その世界がやや小さく見えてしまうというきらいはあると思います。ーーー門間雄介(映画評論家)

冒頭、新宿の街を固定カメラで捉えた映像に音楽を乗せただけなのにずっと目が離せずに喰い入るように観てしまった。濃厚な予感を孕む映像に捕らえられていると感じていながら何も起きないせいで観ている間は意識していなかった音楽の印象が痛烈に残る。音楽をこのように描くのかと驚き!ーーー林未来(元町映画館)