TOP   ⁄  LINE UP

夜、逃げる(2016)



MOOSIC LAB 2016 女優賞(菅原佳子)/スペシャル・メンション(山田佳奈)

『夜、逃げる』

出演:菅原佳子、瀧内公美、松澤匠、山田ジェームス武、後藤ユウミ、林浩太郎、日高ボブ美 ほか

監督・脚本:山田佳奈|音楽:yonge|企画:直井卓俊

誰かの何かになってみたいふたりの、過去も現状もぶっ飛ばす「究極の嫌がらせ」とは?劇団ロ字ック主宰・山田佳奈監督が関西ガールズバンドの雄・”yonige”とタッグを組み、曲者俳優陣が集結しておくる「どうにかなっちゃいたい」わたしと、あの子の、お話。

◉山田佳奈

神奈川県出身。レコード会社で勤務したのち、2010年3月に□字ックを旗揚げ。第8回公演の『荒川、神キラーチューンは、CoRich舞台芸術まつり!2014春グランプリ、サンモールスタジオ最優秀団体賞を受賞。いま注目の若手劇作家・演出家である。

◉yonige

大阪寝屋川を拠点に活動しているガールズロックバンド。卓越されたメロディーセンスと胸を突き刺さるリリックが話題。ボーカルの牛丸ありさは、オーストラリアとハーフの日本人。全5曲が収録されたミニアルバム「かたつむりになりたい」を7月にリリース。


■審査講評

とても輝いているようには見えない登場人物たちなんですが、全体を通してみると放たれているキラキラに目眩がしました。ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

『マグネチック』の個性と中毒性、『夜、逃げる』の実力者たちの競演や作劇のクレヴァーさにも強く惹かれましたが、このCプロ2本は支持者が比較的多いと予想されるので、僕は個人賞のほうでなんとかフォローさせてもらいました。ーーー森直人(映画評論家)

女子のしっかりした観察・考察に基づいた女子のための元気のでるドラマとしての魅力はあるものの、「映画と音楽のコラボレーション」は見られないため、「MOOSIC LAB」の枠外で評価されるべき作品だろう。その意味ではもったいない作品である。ーーー松本CINEMAセレクト

moosicにも脚本賞があればいいのに!と思わせる一番の作品でした。山田監督はレコード会社から劇団主宰者という経歴だけあって、シナリオと芝居と音楽の構築度はとても高いですね。次作を期待したいです。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

菅原さんサイコーでした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

演者さんの熱量たっぷりの演技とリズミカルに飛び交う台詞、そして音楽によってひとつのひとつのシーンが洗練されていて、心踊りました。装ってばかり(装っていないようなふりばかり)の自分でも、何かのために、誰かのために、どうにかなっちゃうかもしれない。分かってる、分かってる、ん、だけど!の向こう側の光を見せてくれてありがとう。ラストまでじっくり観ないと『Yonige』の存在が分からないのは、ご愛嬌?ーーー川島(下北沢映画祭)

舞台の人なのにショットショットの選択がとても良く、カメラもうまいなあと思いました。全体的に台詞を行っているような、また幾分説明的な言い回しだと感じて観ていたのですがが、役者の方々の表情に緩和されだんだん気にならなくなりました。海辺のシーンはとても良いショットで気持ちがよかったです。音楽も映画に合っていました。主人公が「女優だから」と語った時の歯の矯正ブリッジが何となく彼女の自信と表情を増幅させていて、効いていましたが、もしや今正に矯正中だったのでしょうか。気になる。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

「演劇に励むアラサーどん詰まり女子が奮闘する話って、うう…去年も同じような作品があったような…既視感が…」と思っていましたが、全くの杞憂でした。どうにもならない、どうかしている「私たち」の断末魔のような叫びが絶え間なく続き、いたたまれなさだけで豊洲の地下空間埋められるレベル。こういうとにかく叫ぶとかヒステリックな演技って駄目な日本映画っぽいですが、このシャウトは山田監督もしくは演者本人の中に内在しているものかと勝手に妄想し、愛おしささえ覚えます。あと、音楽の距離感が適度にドライで好きです。「音楽で人生変わりましたーーーー」って大仰な感じにせず、あくまでお話のトリガーにしている辺りとか。現代人にとって音楽は日常に根ざしていて、どうしょうもなれない時、そっと寄りそってくれるもんじゃないかっていうことを再認識した次第です。ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

ブス」「自分の価値の上げ下げ」「私以外の女に負けたくない」「私、29だし」「女子として終わってる」「女って思ってもみない嘘をつく、面倒臭いね」。その女子たちの像を前に、男性キャラクターが「女子に生まれなくて良かった」と言います。方向は違えど、根っこの部分は、MOOSIC LABの代表的な1本『おんなのこきらい』が先取りしていますし、意識をしていないとは思いますが、それでも鑑賞者としてそのリンク先がはっきり分かってしまうので、どうなのでしょうか。あえてそのあたりのワードは避けて欲しかった気がします。ただ、演劇内や漫画喫茶など、狭い空間・人物関係で面倒がごちゃついていて、そういう世界のあり方にヒロインが苛立つ様は、いろんな鑑賞者が共感できるのではないでしょうか。個人的な感想ですが、あのキャバ嬢は何がどうなってもやっぱり好きになれません(笑)ーーー田辺ユウキ(ライター)

小劇団の舞台裏の女性のいざこざを描いた作品。主人公のカナはブスでもてない29歳。もうひとりの主人公はワケあり劇団員で彼氏にフラレたことで彼氏をナイフで刺す。江ノ島がラストシーン、長回しが多く、舞台裏の狭い人間関係はよくある話で新味がないのが残念。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

キャストの芝居を見ている時間は面白かったりするのだが、それが映画としての面白さに必ずしもなるとは限らない。この作品だけでなく、こういうことは往々にしてある。クドカンの映画だってそうだ。これはどう言ったらいいのか、ちょっと言葉に迷ってしまうのだが…。コントと芝居の違い、とも違う。ハッキリしているのは、この作品のなかでは何も起こっていないということだ。悶々とした人たちがあっちでもこっちでも蠢いているだけである。いや、海とか行かずにもっと限定された空間でひたすら悶々としていた方がよかったのかもしれない。身につまされる話としてはよく分かりますよ。萌乃の獣のような身体性には戦慄しました。ただ、やはり加奈子のどん詰まりを台詞だけでなく、見せてほしかった。それを描くことが、映画だと思う。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

キャラ描写も細かいし、皆さん演技上手だったんですが、見ていられなくて‥。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

音楽をことさら強調するわけでも、新たな使い方を呈示するわけでもないのに、曲のために作られたドラマなんだということがストレートに伝わってくるところが良かった。過剰なまでの瀧内公美も上手過ぎる菅原佳子も、そのバランスでyonigeを表現しているんだなあ。音楽にとって今回もっとも幸せな作品なのでは。そしてもっとも隅々のキャラまでが活き活きしていて魅力的だった。ーーー林未来(元町映画館)

魅力的でしたー。青春映画の定番や定石を骨子に、劇団の下世話で世知辛い舞台裏で肉付けしながら、行き届いた演出で堂々の正面突破。キャラクターもシチュエーションもセリフも思いつきや使い捨てがなく、細部まで意図がある作品は、気持ちよいです。ヒロインがイヤホンして雑踏を抜けて行く導入、すれ違う人達の手際よいスケッチが、物語の世界観を即座に信頼させてくれました(外側がちゃんとある、というか)。あと余談。編集が三谷幸喜、松尾スズキ、田口トモロヲらの映画を手がけてる上野聡一さん(そこそこ大御所)で驚いたのですが、演劇人の監督作品は上野さん…ってルールがあるの?ーーー溝口徹(横川シネマ)

今回のムーラボで1番映画としての完成度の高い作品だなと思ったし、ロ字ックの舞台を観てみたくなった。わたしは演劇畑にいたことないけど、きっと演劇あるあるが詰め込まれているのだろうな。東京という大きな街で文化に消費されながら疲弊していく加奈子と、恋愛に全力のエネルギーを費やし自己愛と自意識にがんじがらめになっていく萌乃が、再び出会い、再生してく姿が愛おしかった。ーーー山崎花奈美(MOOSIC札幌編主宰)

役者辞めるか?続けるか?アラサー女子。心の葛藤の中で、見事に人生を突っ走っていました。その気持わかるわ~と、感情移入するし面白い。しかし、映画と演劇と音楽の三つ巴という何度かMOOSICでもあった新鮮な試みも、爆発はなかった。MOOSIC的にいえば、海辺でyonigeが歌ってるくらいの遊びがほしかった。それは飛び道具かもしれないけれど別次元に飛んでいってほしかった。ーーー家田祐明(K’s cinema)