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LINEUP[配給作品]

脱脱脱脱17(2016)


★ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016 オフシアター・コンペティション部門 審査員特別賞/観客賞受賞作品
★MOOSIC LAB 2016 準グランプリ/ミュージシャン賞(the peggies)/女優賞(北澤ゆうほ)/男優賞(鈴木理学)

『脱脱脱脱17』

出演:鈴木理学、北澤ゆうほ(the peggies)、祷キララほか

監督・脚本・編集:松本花奈|音楽:the peggies|企画:直井卓俊|プロデューサー:上野遼平|撮影・グレーディング:林大智|照明:陸浦康公|録音:浅井隆|美術:藤本カルビ|108分

34歳の高校生ノブオと、嘘泣きが得意なリカコ。もがく彼らは果たして永遠の17歳を卒業する事が出来るのか?撮影当時高3の松本花奈がthe peggiesのロックナンバーに乗せて送る渾身の青春映画!既にゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2冠を獲得した話題作!

◉松本花奈

1998年生まれの18歳。中学生の頃より映像制作を始める。監督作に、映画「脱脱脱脱17」(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞&観客賞受賞)・映画「真夏の夢」井上苑子MV「大切な君へ」(youtubeにて550万回再生突破)など。

◉the peggies

2011年よりライブ活動を開始。2012年、さいたまスーパーアリーナで行われたEMI ROCKSへ出演。3人が持つ個性豊かな音楽性と、フロントマン北澤ゆうほの卓越したソング&リリックライティング、伸びやかで親しみある歌声は中毒性抜群。

■審査員講評

34歳の高校生…彼の執着が何なのかを気にならせながら、最後まで見せ続けるのはさすがです。最後の監督が出てくるところに愛嬌を感じました。ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

僕が特に、深く魅せられたのはずばり3本。この三強は自分の中で甲乙つけがたいので、グランプリ1本、準グランプリ2本という変則的な形を取らせていただきました。若き天才による『脱脱脱脱17』と『愛のマーチ』。松本花奈監督と伊藤祥監督は、表と裏、王道と異端のように真逆のベクトルを持つ才能ですが、共に寺山修司の匂いを感じたり。ただ両方とも成長の余地という意味で課題は残るはずなので、現時点の評価として「準」の位置に置かせてもらいました。あえて問題点として感じたことを記しておくと、MOOSIC LAB ver.として短縮版に仕上げた『脱脱脱脱17』は、編集で正解を出せているかどうか疑問。完全版を未見なので比較はできないのですが、因果関係の説明や伏線として導入される回想パートが、この尺だと停滞や失速を招いてしまう。意味的なつじつまが合わなくてもいいから、現在進行形の「ひと夏」だけをパッケージングしてしまう選択はなかったのかなと。ーーー森直人(映画評論家)

『光と禿』と同様に、物語のなかにしっかりと(リアルに、という意味ではないが)音楽が位置づけられ、物語において音楽が果たす役割が明確なため、「MOOSIC LAB」の作品としては低い評価をしづらい作品であり、「置きにいった」作品と言いたくなるまとまった作品。その意味で「MOOSIC LAB」らしく、既視感は否めないが、the peggiesの音楽の魅力、「女優」北澤ゆうほ(the peggies)の魅力は十分に引き出せているため、総合的にはグランプリ作品とした。ーーー松本CINEMAセレクト

まずは、プロレベルまでの仕上がりで驚きです。この作品の新鮮さは、松本花奈監督の年齢から醸し出されているかもしれないが、作品の力強さは松本監督のアイデンディティから生まれていると思う。そこが彼女の末恐ろしさである。あと、北澤ゆうほさんはこの作品には必要不可欠な存在でしたね。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

まるで女優なミュージシャン発見しました。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

最も引き込まれた映画でした!奔放な女子高生のリカコを、ただ見守ることしかできないノブオ。同じく観ることしかできない観客の目線が一致した結果、完全に引き込まれました。リカコのキャラクター表現が的確だったことも大きな要因だと思います。そのほか、10代が撮る映画ということは抜きにして、予想を上回っていく展開や、効果的に挿入される音楽、絶妙なカメラワークに唸りながら拝見しました。あと、「泣くこと」に観客を参加させるストーリーにも上手さを感じました。ーーー高橋恵(下北沢映画祭)

最初19歳の監督が!ということで気になり取りあげた作品でしたが、観たら10代であることなんて考えることなく、やりたいこと、今やれることを全部やってやろうという監督の本気が溢れた作品でした。小さくまとめようなんてことはこれっぽちもなく、かなり無茶なことも試みていたと思います。故に妙に手慣れた感じもありました。それだけ沢山映画を観てもいる人なのだろうなあとも思いました。MOOSICLABの対する本気感から言えば群を抜いていると思えた作品でした。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

正直言って、17歳の時観たら、絶対「脱脱脱脱17」は好きじゃなかったと思う。若さということを傘に着て、甘酸っぱい青春映画を撮って評価されているなんて(しかも可愛いし)解せなさ過ぎて地団駄踏んでいたと思う。しかし、現在、俺の中の青春性は枯れ果たオトナだぜ。最近、彼女も出来たしルサンチマンなんかに依存しません。そういうファッキンオトナな視点で観ると、今作はシン・ゴジラの牧教授みたく「松本花奈は好きにした、君らも好きにしろ」ってことだと思う。だって、出てくる大人たちみんな狂人にみえない?クソぶりっ子の教師、ヒステリックな母親、ストリップ小屋に出てくる妖怪みたいな女ども。本当に松本花奈のオトナ像は相当歪んでいるよ。ご都合主義的な部分も重なってこういう狂人描写がノイズになる所もあるけど、一方でそれが突き抜けて気持ち良さ、共感さえ覚えるところがある。自分たちを支配し、抑圧していた「オトナ」や「世間」に対する苛立ち&反骨精神をフラッシュバックさせてくれる。『脱脱脱脱17』の「脱」は「脱衣」「脱皮」「脱出」といろんな言葉を代入することが出来るけど、自分は「脱獄」という言葉をあてはめたい。嘘泣きメンヘラのリカコ、おっさん高校生のノブオは何かを探して求めて旅をしていたというより、自分の弱さが作り出した自意識の牢獄からなんとかして脱獄したいように見えた。むしろ、松本花奈自身が大人とのしがらみとか世間の評価という檻から脱獄したかったんじゃないか。ああ、これは松本花奈なりの精神的脱獄映画、松本花奈の網走番外地だ!!!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

伸びしろは一番感じた作品です。北澤ゆうほさんの動かし方は、17歳当時の松本花奈の感受性だからこそできると思いました。だけど、「オッサン」をはじめ各キャラクターが弱かったです。ユーモアとせめぎ合わせるべき、非情さが物足りなかった。劇中の「一生懸命やってんだよ」という一言の説得力ってすごく重要なのですが、結局どれも動機付けが生優しい。ストリップ劇場が出てきて、でも若い登場人物たちはやっぱり脱げない。映画的に守られる。嘘泣きが得意なヒロインが、嘘泣きすらできない状況なのに。そこをどのように踏み込んで描くかに期待していましたが、驚きが満たされませんでした。物語の中でクローズアップされている人物だけが可哀想なのか。ストリップを見にきて、金を払って毎回野次を飛ばすお客はどうなのか。各キャラクターに説得力を持たせる背景の動機付けが薄く、スタイルだけになっていたのが、乗り切れなかったです。ーーー田辺ユウキ(ライター)

「できちゃってる」感がある。非常にクレバーで、熱意もあり、世界の細部にも目配せが行き渡っていて、「映画」というフォーマットを巧みに操っているように見える。が、果たしてそうか。問題はノブオさんである。ノブオさんが父親探しのリカコに引っ張られてストリップ小屋に収まったあたりからまったく存在が消えてしまった。で、思い出したように「こそか!」というところでイキナリ飛び出してしまう。あそこでノブオさんが場をさらってしまったために、リカコがここまで来たケジメがつけられずに終わってしまった(もしかしてそういう意図なのか?)。その後のキスはまったく無用だ。10代女子の融通無得感でリカコの言動がキャラクタライズされているのは、作り手にそういう人の実感が分かるからだろう。しかし、ノブオさんはそうはいかない。ノブオの過去エピソードはもっと早いタイミング(ストリップ小屋に落ち着く前かその直後)で出しておくべきだったと思う。それだと作り手としては手がなくなってしまうおそれがあるかもしれないが、むしろそこからノブオの本当の意味での物語を立ち上げるべきなのだ。リカコは結局、何を乗り越えてどこに向かうのだろう。それぞれ最低な両親とはついに向き合わず、ノブオに応援してもらってプールを泳いで縦断した。そこでファナティックにモリアガったふたりと一緒に観ているこちらもジーンとくればよいのだろうか。そうではないだろう。むしろ不安になる。そういった問い自体が「既存のレール」であって、お門違いな老婆心だというのならば、「映画」というフォーマットを意図したこの作品の佇まい自体が「嘘泣き」の類と言えまいか。リカコがギターを奏で歌う時、彼女は役を演じている北澤ゆうほという「ミュージシャン」の状態で映っているように見えてしまう。リカコは何者でもないただの17才なのではないか。そこをうやむやにしたままに「できちゃってる」感じに見えるのが、どうしても引っかかってしまうのだ。「関係」をストーリー展開のツールとして扱ってはいけない。「関係」そのもの、核たるものをえぐり出す執念を持ってほしい。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

『脱脱脱脱17』は主演のthe peggiesのボーカルさんが、夢眠ねむ×篠崎愛的な魅力があり、演技も歌も良かったです。テーマ的に母親への不信と恐怖が強く、監督は元子役だそうですが、「子役」という「人間が一番素直でいていい年代に自由を奪われた存在」による人間不信故かなと、ポップな作風ながら根深いもの、闇を感じました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

18歳の女の子が撮ってるとは到底思えない作品‥!!!おっさん高校生や熟女のおっぱいを映像に出したいと思います?フツー?北澤ゆうほちゃん、目の離せないヒロインぶりでした。演技力が伴えば無敵でしたね!主題のわりにコメディ要素が多くてもったいなく感じました。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

北澤ゆうほの魅力に尽きる。ややむっちりして眠そうな容貌が可愛すぎて悶絶。声もすてき、歌もすてき。でもちょっと映画として音楽の使い方が凡庸で、MOOSIC的には評価を上げきれなかった。ーーー林未来(元町映画館)

昨年のムーラボで上映した前作「真夏の夢」は、招待枠でなくコンペ枠だったらグランプリに推したいくらい好きだったのですが、今作については「MOOSIC LAB verって?」という事に引っかかりつつ鑑賞。いくつかの作劇上の「?」が、短縮版ゆえなのか、元々そういうものなのか…キスシーンの置き所とか、父親の再登場に向けた布石の有無?あたりで傾げた首が傾いたままで、やや印象が散漫に。ヒロインの母親像は、こういう人物像を可視化できる世代が遂に現れたー!?と感心しました。ーーー溝口徹(横川シネマ)

セーラー服のまま水に飛び込むというビジュアルだけで、胸がきゅうっとなり、たまらなく切ない気持ちになるのだ。いつの日からか、足を止めてしまったわたしたちへ、女子高生監督 松本花奈が「進め」というエールを送ってくれている。松本花奈監督にはこれからもどんどん成長していって、全力でエンターテインメント作品を撮って欲しい!ーーー山崎花奈美(MOOSIC LAB札幌編主宰)

十七歳の反抗。すべてを脱ぎ去り、少女は女になるのだ。しかしながら、音楽的な要素を濃くし、コンパクトになった本作。なんだか新鮮味はより薄れてしまったのが残念でもある。ーーー家田祐明(K’s cinema)