LINEUP[配給作品]
■「やり方が分かるからやるんじゃないでしょ。やりたいからやるんでしょ。」———繰り返されるこの言葉が全てなのだと思う。岩切一空という人はじぶんという人間をよく知っている。じぶんというものを振り絞りさらけ出す意味を知っている。しかも、あくまでも冷静に、客観的に。苦しさを伴うその作業を、彼は止めない。「映画をつくりたい」ただその一心で。じぶんの無力さを認めながら映画と格闘し続けようとする彼の覚悟が、たくさんのたくさんの観客に届くことを願います。
■岩切一空監督『花に嵐』は全ての映画が撮られてしまった後だからこそ撮られた、地中から現れた突然変異的傑作。ヌーヴェルヴァーグから89年版『座頭市』、Jホラー、AV、セルフ&フェイクドキュメンタリー、POV、『ゼロ・グラビティ』まで射程に入れ、己の表現へと昇華させた凄まじさに感嘆。
■センスの塊みたいな映画。笑いも驚きもエロもゲスもホラーもアドベンチャーもすべてぶち込んで、最終的に青春映画であることの奇跡。絶対に見逃してはいけない一作。奇才あらわる。
■すこぶる知的、すこぶる大胆。映画づくりの映画としての自主映画という既成の枠をわざわざこしらえるふりをして、そこからダーッと飛び立つのだ。羽がもげて墜落するかもしれないのに、そんな不安はうっちゃって、青空ならぬ灰色の空に飛び立っていく。それだけでも驚くのに、自ら主演して、ラブホテルでドギマギする<僕>のとぼけた味わいがメキシコ時代のまさにブニュエル。おかしくて、楽しくて、このテイストはどこかラテンのマジカル・リアリズム。そうした色々な特徴が、つぎはぎなんかでは全然なく、大きなエネルギーとなって固まった。岩切監督の才能に幸多かれ!
■本作は、独白による青春映画のような体で始まりながら、徐々にジャンルを越境し、POVの特性を活かしたホラー映画の様相をみせるに至り、現実と虚構の境界線をも曖昧にさせてゆく。このPOVの手法によって観る側の固定観念を揺さぶる演出には、白石晃士監督による『戦慄怪奇ファイルコワすぎ!』シリーズと同様の系譜を指摘できる。また、井伏鱒二の文学を愛した川島雄三の言葉を引用したタイトルには、映画製作への愛と覚悟を感じさせる。そして映画終盤では、「映画は記憶である」ということさえも示唆させている。それゆえ『花に嵐』は、新たな時代の<映画についての映画>である、といえるのではないだろうか。
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