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マグネチック(2016)

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MOOSIC LAB 2016 グランプリ/ミュージシャン賞(SACOYAN)/男優賞(大木宏祐)

『マグネチック』

出演:大木宏祐、高橋あゆみ、和田碧、SACOYAN ほか

監督・脚本・編集:北原和明|音楽:SACOYAN|撮影:守屋良彦

 

したまちコメディ映画祭2015に出品された『ドラマ』が一部でカルト的な衝撃を与えた北原和明監督が、ここ数年の活動停止により伝説化していた福岡在住の天才シンガーソングライター”SACOYAN”とのタッグで贈る虚実ないまぜの物語。

◉北原和明

『ドラマ』がしたまちコメディ映画祭2015に入選。東京都杉並区在住。

◉SACOYAN

視力弱い。足立区育ち。ラジカセに歌を吹き込みながら13歳からギターの日々。18歳MTRを購入→曲投稿。19歳持病が悪化。実家住みで腫れ物のような時間の中SACOYANを開始。11年、福岡に移住。長年の音楽人生を一時停止。16年、録音ボタンを押す。


■審査講評

頭の中をカセットテープが回りだす。SACOYANドキュメントではアナログVUメーターが振れ、ドラマの中ではデジタルレベルメーターが振れるような不思議な作品だった。どこか変な役者たち。感情を持つその顔たちは、前へ前へ押し出されることもなく、物体として佇むようにいる。アナログなカセットテープが回転しながら、規則正しいメーターが振れていく。SN比が悪いカセットテープの音楽が心地よく感じられるようにこの映画には不思議な磁力により、ぬくもりとなって変化する新たなMOOSICを体験した。観客賞は取れないだろうけど、審査員の心は揺さぶられたに違いない。ーーー家田祐明(K’s cinema)

脱力感を装いながらも、ハードコアにあまのじゃくな男のドラマは好きです。もう少しタイトだったらなー。ーーー溝口徹(横川シネマ)

SACOYANの歌声の素晴らしさ!役者に棒読みさせて(わざとなんだろうか?)歌にエモーションを担当させている感じが実験的でかつ成功していた。延々と責め立てる言葉が音楽になっているジャングルジムのシーンは思わず拍手。ドキュメンタリーパートはほとんど印象に残ってないが、歌と同様そこがエモーションを担当していたような、そこに載せられた感情だけは強く記憶に残っている。ーーー林未来(元町映画館)

構成、すごくおもしろいですよね。SACOYANの独り語りパートも引き込ますし。ストーリーパートの演技と編集は正直観ているのしんどかったですが、星野くんが不思議と憎めないのと、告白シーンはすっごい最高でした!!!ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

よかったです。まさかこのご時世にあだち充が自主映画を撮るとは…という錯覚に陥りそうになったが、軽快なラブコメ作としてかなり成功していると思う。とりあえずのテーマは「距離」。東京タワーと電車との。彼と彼女の。日本とアメリカとの。そして思いがけず音楽がもたらした出会いからの、接近。カッティングにときおり香港の血がにおった。これだけ飄々と重みを感じさせずに、かつドラマ(トレンディにあらず)を語りきるのは絶妙なセンスだと思う。センスと言えば、遊園地(?)でのワンシーン。MLBの映像が映る大画面モニターを背にしての会話など、一見さらりとしているが、なかなか出来るものではないと思う。音楽との距離感も絶妙。キャストもすべて素敵でした。ただ、「巧い」だけに終始してしまったという気もする。ネオテニー(幼体成熟)なままで世界が完成され、たとえばそこに、異常や破綻や狂気はあっただろうか。つまり、自身の描く世界を整形するよりもなお強い作家の野心というようなものがどこかに潜んでいただろうかという疑問は残る。例えば、映画的な手つきのセンスでは『君の名は。』より上だと思うが、『君の名は。』を観た時に「いや、『ダンスナンバー 時をかける少女』は超えてないだろ」と思ったような、ロロ・三浦直之が放った圧倒感というようなものがなかったのが心残り。しかし今後絶対伸びると思うので、期待しています。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

女性監督が描くような繊細でナイーブな作品。モテないと思っている男と彼のことが好きな女性との2年間が描かれる。父と母のドキュメンタリーが挿入され不思議な感覚に襲われる。編集が荒く、黒味の転換は良くない。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ

グランプリに推すか、どうするか迷いました。意図がちゃんと分かる映画でした。ツッコミどころはたくさんあります。「この人たちって結局はちょっと狂ってるよね、ヘンな人たちだよね。そうだったら観ていて楽しいんだけどな」と思ったのですが、何となくエモいモードに持っていったりして、さらに男性キャラクターがいまいち立ち切らないまま、シンプルな青春ものに収まっていくところが、逆に収まりが悪くなっていてムズかゆいです。ヒロインが、相手役の男の子について「中学からあなたのことを知っている。いろんな良いところを知っている」から、ダメ男でも見限れないのだけど、それが具体的に何なのかとか。いろんな背景や詰めがちゃんとあれば。リサイクルショップで買った服から出てきた、カセットテープ。その中に収録されている音楽。それを「すごく良かったよ、聴いてみて」というヒロイン。それを受け取っていく男。なぜそういう行動が成り立つのかとか、理由付けは欲しいところではありますが、音楽が人の手に渡っていく流れを「何とかやろう」としている意志がありました。SACOYANさんの楽曲の圧倒感はもちろんのことですが、あのドキュメンタリーパートは、MOOSIC LAB 2016の中でもっとも引力がありました。もっともっと観たい、記録でした。ドキュメンタリーパートは撮影も意識せずしてすごく良くて、だからこそフィクションパートは強引にでももっと人に迫って欲しかったです。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

開始5分で他人に観られないようこっそりサムズアップ。こういう映画観たくてMOOSICLAB観てるんだよ。まず、演者たちがヤバいよね。演技が上手いっていうよりは、フィクションなのに本人が持っているキャラクター性がむき出しになっているのがヤバいよね。売れない芸人より、「月曜から夜ふかし」に出ている素人の方が100倍面白いのと同じ感じ。
小慣れた演技よりも、圧倒的に不格好な人間性の方が記憶にこびりつくよ。そんな演者に内在するキャラ性のせいで 、物語としては真面目なのに何故か笑いがこみ上げてくる自分がいる。川沿いでの喧嘩シーンとかゲラゲラ笑ってしまった。一方で、 SACOYANのドキュメンタリーパートは大切な誰かの喪失感で満ちていて胸をギュルギュルと締め付ける。家族、父への切実な思いに落涙しそうになるのに、狂人たちのフィクションパートに切り替わるせいで涙吹き飛んでしまうじゃねーか!!あまりに対照的な2つのパートだからねじれの位置でそのまま交わらずに終わるかなと思ったら、最後に連結して吃驚仰天。ここで出会うのはあくまでフィクション次元の中の話だけど、そこで発せられる SACOYANの言葉はホンモノ。そんなホンモノの言葉に背中を押され、ダサさしかないアイツが一歩踏み出す姿を見て心が震えないわけがない。生々しくて、気持ち悪い。だけど、感じてしまうカタルシス。嗚呼、アイツらと別れるのが名残惜しい、また、どこかでアイツらに出会いてえよ!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

言い回しや佇まいが、かなりきわどい所を攻めて来ているなあと思った。モノローグはあまり好きではないのですが、映像にかなり助けられていると思われ、ショットは良かったと思いました。ジャングルジムのシーンが先のメリーゴーランドの話とシンクロしていいなあと思った後に本当にメリーゴーランドまで出てきたので、本当のメリーゴーランドはなくても私は良かったかなと思いました。ドキュメントの部分と物語と音楽が最後でクロスするシーンはとても心地よく、そこまで来ると、前半のギリギリの作り込みも気にならなくなっていました。ちょっとラストが甘いかなとも思いましたが、見直すたびにいい意味で印象が変わる作品だと思います。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

「一見平凡に見える人生にも、ドラマチックに音楽が鳴る瞬間があるのだ!」と深く感動させられた。
主人公と音楽の出会い方の運命感、ドキュメンタリーパートがドラマパートの音楽の強度を高めるという意味で、今回最も「MOOSIC」な作品だったと思います。愛すべきキャラクターたち、時に超映画的なシーンの数々にもカンパイ!ーーー松岡宏起(下北沢映画祭)

まさかこんな感動が待っていたなんて!!!今回唯一の涙部門一位です。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

この作品は監督に色々質問してみたい作品です。もしかしたら私の大きな見当違いかもしれないからです。芝居も映像も、若干嘘っぽいというか説得力が無いような、そんな感じが全般に漂ってますが、実は全てSACOYANというミュージシャンの音楽とドキュメンタリーを加味する為の、計算された脚本と演出ではないか?と自分なりに言い聞かせています。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

「映画と音楽のコラボレーション」というよりも、「セルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーとフィクション映画のコラボレーション」にこそ可能性を感じさせてくれた作品。いずれのパートにも魅力はあるが、SACOYANのモノローグによるセルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーのパートに、フィクション映画のパートが(個々のキャラクターのチャーミングさは否定しがたいものの)、強度において拮抗できていないのが最大の弱点か。セルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーのパートの圧倒的な生活感がフィクション映画のパートの生活感の希薄さを際立たせ、後者のロマンティック・コメディとしての魅力を削いでいると言い換えてもよい。その意味でおしい作品だが、新たな可能性を感じさせてくれた作品であるのは間違いないため、準グランプリとした。ーーー松本CINEMAセレクト

『マグネチック』の個性と中毒性、『夜、逃げる』の実力者たちの競演や作劇のクレヴァーさにも強く惹かれましたが、このCプロ2本は支持者が比較的多いと予想されるので、僕は個人賞のほうでなんとかフォローさせてもらいました。ーーー森直人(映画評論家)

SACOYAN好きからするとグッとこずにはいられないドキュメンタリーパート…かと思えば、フィクションパートの皆さんが愛しくて愛しくて…作り手と受け手それぞれの精神性が交わって、音楽だなあと。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)