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光と禿(2016)

MOOSIC LAB 2016 観客賞/審査員特別賞/ベストミュージシャン賞(クリトリック・リス)
最優秀男優賞(スギム)/最優秀女優賞(岸井ゆきの)

『光と禿』

公式サイト

出演:スギム(クリトリック・リス)、岸井ゆきの、樋井明日香、武田航平、柴田杏花、竹内海羽、金井勇太、石田法嗣、空美、ひなつけんた、伊東祐輔、中西麻梨香、谷手人、小見美幸、渡部直也、ワンデー檪原、桜まゆみ / 小沢真珠

監督・脚本:青木克齊|撮影:玉田詠空|照明:斎藤順|録音:西山徹|編集:田巻源太|助監督:森脇実|スタイリスト:袴田知世枝|メイク:井手奈津子|制作部:馬淵敦史・中野竜馬・伊勢隼一・八城竜祐|ステディーカム:合屋直樹|スチール:土田祐介|カラリスト:今西正樹|音響効果:西村洋一|フォーリー:渡邊雅文|制作協力:シネムーブ|企画:直井卓俊|企画協力:加茂啓太郎

中年のハゲたミュージシャンと、ちょっとひねくれた盲目の女。
交わるはずのなかった人生がひょんなキッカケで交錯する。
小さな世界で生きる二人にとってお互いが一条の光となって、未来を照らす。
真面目に、シュールに、ちょっと笑えて、ちょっと泣ける、
人生を下手クソに生きている人たちへ贈る応援譚!

◉青木克齊

2005年よりフリーの助監督として映画を中心にドラマ、CM、PVなど様々な現場に携わる。主に佐々部清監督、瀧本智行監督に師事し、山田洋次監督作品などにも参加。『さぬき映画祭2013』をキッカケに初長編「竜宮、暁のきみ」を自主製作し、劇場公開を果たす。

◉クリトリック・リス

大阪出身、スギムのソロユニット。きわどい名前の禿げた46歳、パンツ一丁のオヤジがチープなトラックをバックにパワフルでスカムなパフォーマンスを繰り広げる。人々の生き様をシュールな視点で描いた歌詞が笑えて最後にはなぜか感動して泣けると評判を呼ぶ。


■審査員講評

岸井ゆきのさん、樋井明日香さん、武田航平さんと雰囲気が良かったです。ただ、岸井さんがうますぎるのかスギムさんがやや浮いているような…。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

どうせ観客賞も獲るだろうなあ……と思いつつ、オーソドックスな『光と禿』をトップに置いたのは、実はいちばん「想定超え」の結果を叩き出したのがこの作品だったから。すでにプロの仕事人である青木克齊監督なら、80点は堅いだろう。ところがまさか95点以上マークするとは!これはMOOSIC史上、最高の「娯楽映画」と言える名作。堅実で無駄のない語りの技術のうえに、クリトリック・リスとの男色さながらのねっとりした絡み(コラボ)が乗っかった。ガチな愛にあふれてる。スギム氏は男優レース最強でしょう。アナル・カントやナスカ・カーのTシャツを着ているのに、島木譲二的な愛敬と人懐っこさに満ちているなんて、無敵すぎます!ーーー森直人(映画評論家)

『脱脱脱脱17』と同様に、物語のなかにしっかりと(リアルに、という意味ではないが)音楽が位置づけられ、物語において音楽が果たす役割が明確な上、岸井ゆきの、涌井明日香という、すでに注目され活躍している女優たちの安定した演技力によって「格上」の作品と感じさせるため、『脱脱脱脱17』以上に低い評価をしづらい作品。「MOOSIC LAB」らしく「置きにいった」感は否定しづらく、『脱脱脱脱17』と同様に、既視感は否めないが、クリトリック・リスの音楽のキモオモシロイ魅力とスギム(クリトリック・リス)のキモカワイイ(?)魅力は十分に引き出せている。すでに評価されている女優たちに支えられた作品であるため、審査員特別賞とした。ーーー松本CINEMAセレクト

第一印象、「これはズルいよね!」この感想は見る前からありました。クリトリックリスさんと岸井ゆきのさんのカップリングはそりゃ最強でしょ。そしてスギムさんが役者までやるなんて。でも、それを裏切らなかった青木監督、これこそプロの手腕。脚本も含め素晴らしい出来でした。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

スギムさんいい人でした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

禿げで変態と間違えられた男・スギムと盲目の美少女・梢の美女と野獣型ラブストーリー。王道のラブストーリーではありますが、特にスギムのキャラクターが立っており、この映画を観た誰もが応援したくなる人物として描かれていると思います。梢を演じた岸井ゆきのさんの演技もスギムさんの頭と共に輝いていました。力強いクリトリック・リスの音楽が激しい光を放ち、この作品に彩りを加え、観客の心に光を灯す映画になっていると思います。ーーー髙橋洋(下北沢映画祭)

タイトルだけ見るとふざけた作品かと思いきや、こんかいのMOOSICLABの中では、かなり正統派の作品でした。目の見えない少女とおじさんに『街の灯』を思い、また長い道をゆくラストシーンに『モダンタイムス』がかさなり、チャップリンへオマージュとも思えてしまい、監督自身の映画愛のようなものも意図していれたのかなと思いました。ラストシーンは光がいっぱいで中々良いショットでした。昨年もですが、どこか中年の男性がでてくると、悲哀も含め、「おじさん頑張る」作品になる傾向があるかなと思います。年々MOOSICLABとの距離感を不安に思うことがある私にとって、少しほっとするフィールドだなあと思います。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

いい意味で浮いてますよ、いい意味で。新入社員向けのセミナーでに中途入社の社員が混じって格の違いを見せつけるあの感じに似てますよ。
映画的な完成度、相対的に見て全然高いですよね。特にエンドロール部分とか、「っよ、これぞ音楽映画や!」と膝を打ちたくなる。これはひとえにおじさんたちの底力ですね。商業、CM、PV、インディペンデント、色んなフィールドでゴリゴリやってきた青木監督と、46歳になってもハゲでパンツ一丁でシャウトし続けるクリトリック・リス、二人の「おじさんたちの ONCE AGAIN」に落涙。あと、お下品なワードが頻出しますが、作品の中での障碍者描き方は超絶お上品だと思います。「ウェ」っとするような、湿っぽい描写は避け、適度な下ネタと愛らしいおじさんを挟むことでちょうど良い塩梅に。「ちょっと~~24時間テレビくんは見習ってよ~~~~」とこっそり心の中で呟きました。加えて、盲目の女性をさらっと演じきった岸井ゆきのさんの技量に結構支えられてますね。何より可愛い。お餅みたいな頬っぺたむぎゅーって引っ張られているシーン…あまりの可愛さに悶絶しましたよ。岸井さんの頬っぺたの柔らかさを科学の力で再現した団子があったら僕は即購入します!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

クリトリック・リスのスギムさんが主演・音楽となると、「この人のことは、みなさんもう分かっていますよね」という前提や、その個性の強烈さなどで、いろんな情報をすっ飛ばしてついついキャラキターを描きがちだと思いますが、青木監督はきちんと丁寧に、まずは見た目そのまんまの気味悪いオッサンとして映して、劇中でも岸井ゆきのさんに「変な曲だけど、何かいい」という、至極当たり前でありながら、初めて聴く人の立場にもちゃんと立った感想を言わせているところに、好感が持てました。実際のスギムさんはハゲ&パンツ一丁で勝負できているけど、盲目の少女が相手では「おもしろビジュアル」を生かせないどころか、ルックスに後ろめたさを感じている部分も、ほほえましかった。盲目の少女なりに、スギムさんの男性像を、彼が紡ぎ出す音楽像を、情景として浮かび上がらせている。スギムさんの「見えへんけど、見えるものがある」という台詞は、この手の映画のスタンダードすぎてどうかと思いますが、彼女が見えているものが、果たして本当はどういうものなのか、それを想像してみたいと感じました。あと、スギムさんを最優秀主演男優賞に推しましたが、本当は芝居演出の面で、もっともっと色々動かして欲しかったです(何だかんだで格好良すぎますよ、これは)。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

『光と禿』は映画としての完成度も高く、満足感も高い1本。そして何より、ミュージシャンであるスギムと映画女優である岸井ゆきのの共演。そして二人ともベスト。これこそ、映画と音楽の共演、MOOSICではないだろうか。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

シンプルな構成と作りで、一見好感は持てそうなのだ。ただ、ドラマがない。クライマックスがないのに肩透かしを食らった。現実のクリトリック・リスを見慣れているせいか、最早あまり卑猥、ゲス、デンジャラスな印象がないのですが…(むしろ爽快なキャラとパフォーマンスだと思っているので)。一般の若い女性なんかだとやはりああいった印象を普通に持つものなんでしょうか?「クリトリック・リス」というワードでダイレクトに「クリトリス」と連想して嫌悪感を抱くっていうことは、実はほとんどないような気がする。そういうところに、作り手が「ありき」のイメージのなかで作劇をしてしまっている印象を受けた。冒頭、援交なのかと思いきや…というくだりから、次のシーンで痴漢にされてしまうくだりなど、基本的にスギムという人が「一般社会に勘違いされて生きなければならない人」という描写が続くのだが、それにしても作中で描かれるのは優しい(当たり障りのない)世界だと思う。闇がない。クリトリック・リスの爽快なパフォーマンスは、社会に生きるなかで絶望にも闇にもズブズブに浸っているからこそ、その反動で清々しいはずなのに、そこが描かれていないのはやはり片手落ちと言わざるをえない。「クライマックスがない」と前述したが、スギムにとって“勝負”のライブが終わった後、岸井ゆきのと会わずにその晩をやり過ごして、「もうええねん」となっていた次のシーンで、二人が川原で並んで座っている、ここのこと。スギムが岸井ゆきのと対面する時にどういうアクションをするのか、がこの作品で最も重要な「見せ場」だったのではないか。それを外されてしまったのが最大の問題であると思う。
【1】主人公スギムが単に「天使的な人」として描いてしまうことの危険。人間としての異形(良くも悪くも)を映画の手つきで見せてほしかった。岸井ゆきののキャラクターも同様。
【2】こうしたMOOSIC的な作品でよく思うのだが、ライブシーンが入っていればそこが「クライマックス」だと考えてしまうのは、違うと思う。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

『光と禿』は、クリトリック・リスさんの歌と存在感が圧倒的で忘れがたいインパクト。「どうしてあの父にあの娘」という伏線を、「小沢真珠」の配役によって回収してて丁寧さを感じました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

岸井ゆきのさんの演技が本当素晴らしかったですね。私が個人的にクリトリック・リスを好き過ぎるので、この作品がその魅力を生かせているか?というのはちょっと疑問だったな、という気持ちです。監督のスギムさんのライブとのギャップを見せたかった、という談を見ましたが、ライブシーンも売れない中年ミュージシャンという扱いだし、演技もライブもストーリーに閉じ込められられちゃってる印象。エンディングの疾走感は最高!!!焼き飯とライス大が映像化されてるのも嬉しかったです。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

スギムはじめ役者の魅力は全面に出ているが、クリトリック・リスのライブパフォーマンスと普段のギャップを描くことを目指したとあるがおそらく“普通のスギム”に比重を置き過ぎたがために凡庸なドラマになってしまった感がある。クリトリック・リスをよく知る人たちが、スギムのやや照れ演技をきゅんとしながら観る映画。ーーー林未来(元町映画館)

楽曲も役者もよい!のですが、おっさんの造形がピュア過ぎて…。ーーー溝口徹(横川シネマ)

映画を観てライブに行きたくなるというのがMOOSIC LABの醍醐味だと思っている。スギムさん、面白そうだけど、「クリトリック・リス」って名前がちょっとアヤシイしWebで検索するのも抵抗あるし、一人じゃライブ行きにくいな、っていう女子は是非この映画を観て欲しい。ーーー山崎花奈美(MOOSIC札幌編主宰)

印象に残ったことから書けば、「光と禿」。まさに来場するお客さんたちの笑顔に表れる満足感。キャリアを積んだ青木監督の力量が作品に表れている。オーソドックスに、丁寧に、哀愁をもって中年男とろう者の彼女のドラマを作っている。最後に放たれた光に感動すら与える。音楽もキチッとドライブライブの熱。そう、上手い。いい話。楽しませる。9本の中で頭抜ける完成度だと思った。でも、無難すぎやしないか。ーーー家田祐明(K’s cinema)