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WORKS[企画・その他]

バカンスは始まったばかり(2026)

2026.6.19(金)-新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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こんなはずじゃなかったーーー。惚れた晴れたの夏物語。


品川ナンバーのミニクーパーで、とある海辺の町にやってきた三人。彼らの目の前に広がるのは、ど こか陰りのあるブルーグレーの海。暑さ本番の太陽がぎらつく日にはまだ少し遠い、淡い色彩に覆われ た夏の始まりの出来事――。

監督・脚本は木村聡志。この特異なシネアストが編み出す人間喜劇は常に進化していく。2018 年のデ ビュー作『恋愛依存症の女』から始まり、いつしか KCU(キムラ・シネマティック・ユニバース)と呼 ばれるようになった奇妙な連作群。今回は初のバカンス映画だ。ジャック・ロジエやエリック・ロメー ル、ギヨーム・ブラックといった代表作家が挙げられる、仏映画の定番ジャンル。通例は“屁理屈 9 割” と“名言(のようなもの)1 割”で組成される KCU の会話劇だが、本作は意外にもたくさんの詩篇が劇を 埋める。“詩”といえば、ホン・サンスの映画が好んでよく出すモチーフでもある。

主な舞台となるのは、⻘年・太宰(足立英)の別荘だ。そこに恋人の詩菜(新帆ゆき)と、友人の優 香(芋生悠)が訪れる。夫と離婚したばかりの優香だが、実はかつて太宰と付き合っていた。そんな三 人を迎えるのが、地元で暮らす詩人の天馬(山口雄大)。やがて彼が営む“詩の教室”に通う教え子たちも 絡んできて――。

木村聡志の映画は〈カップルズ形式〉を軸とした構造を取る。2 人ずつフレームインする“1:1”の場面 が多く、様々な組み合わせの連鎖で劇が展開していく。「好き」という感情が各々のフォーメーションを 決め、すれ違いながら関係性を動かしていく。誰が誰に不意打ちのキスをするのか、どの席に誰が座る のか――。今回の椅子取りゲームのような恋愛模様の実況中継は『違う惑星の変な恋人』を彷彿させ、 “詩の教室”の織り成す「部活」感は『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』のスカッシュ部とも重なる。

いつも通りノリはユルいが、やはりアンサンブルは端正で完璧。木村聡志は素知らぬ顔で、またしても洗 練された傑作を届けてくれた。きっと日本の夏は今年も酷暑だろう。でもこの映画は季節外れの涼し気な 潮風をそっと運んでくれる。(文:森直人)

STORY…夏の始まり。3 年連れ添った春樹(五十嵐諒)と離婚したばかりの優香(芋生悠)は親友の詩菜(新帆 ゆき)とその恋人の太宰(足立英)と共に、とある海辺の町へとバカンスに訪れた。そこで、かつて恋 仲にあった太宰と久しぶりに再会した優香は徐々に太宰への想いが再燃していく。一方、詩菜は海辺の 町で暮らす詩人の天馬(山口雄大)に惹かれていて…。

芋生悠 足立英 新帆ゆき 山口雄大 五十嵐諒 白石優愛 戸塚有輝 Q本かよ 古堅元貴 烏森まど 村田凪

監督・脚本・編集:木村聡志|主題歌:モテギスミスバンド「バカンスに行こうよ」 撮影・照明:中村元彦|録音:堀内萌絵子|美術:藤本楓|スタイリスト:中村もやし|ヘアメイク:安藤メイ|助監督:中村幸貴|制作:山口真凜 スチール:染谷かおり|音楽:山城ショウゴ|宣伝美術:寺澤圭太郎|プロデューサー:市橋浩治|ラインプロデューサー:田中佐知彦 アソシエイト・プロデューサー:大久保孝一 黒川和則 児玉健太郎|特別協賛:ラディアスセブン 制作プロダクション:Ippo|配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS|宣伝協力:梶谷由里|製作・配給・宣伝:ENBUゼミナール 2026年/カラー/ヨーロピアンビスタ/ステレオ/85分 ©ENBUゼミナール