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WORKS[企画・その他]

劇場版 しろぜめっ!(2015)

MOOSIC LAB 2015 公式出品作品

『劇場版 しろぜめっ!』

撮影・編集:森孝介|音楽・出演:スガダイロー、ノイズ中村

フリージャズピアニスト”スガダイロー”率いる”スガダイロートリオ”。その全国ツアーに密着した笑いあり、涙あり、演奏ありのドキュメント・ロードムービー『しろぜめっ!』。WEB上で好評だった同作品を劇場版として再構築!新たに撮影・編集を施され、生まれ変わった映像が堂々スクリーンに登場!(カラー/60分)

◉森 孝介

写真家・映像作家。1980年生まれ。大阪育ち。2014年、映画「瞬か、とはなんだったのか?」を公開、監督デビュー。 カメラワーク及び作品に一貫した特徴は強い主観性。存在に肉薄する画面構成は、現場や関係性を追体験させる力強さを持つ。

    ◉スガダイロー

ピアニスト。1974年生まれ。鎌倉育ち。即興を主体としたプレイスタイル、野獣のように、時に優雅に。その重要度から、対決・共演したアーティストは数え切れない。また近年では作曲家としても評価を受け、CM・舞台等に活躍の場を広げている。

※審査講評

MOOSICの過去作になかったポジション(作風)を埋めた点で貴重な一本だと思います。フリージャズのリズムと精神に同期した文体で、内容は『ハングオーバー!』にも近い(いいトシした)チーム男子のロードムービー。ただ劇中でもさりげなく語られていたように、問題点は「対象に近すぎる」こと。いちげんさんに仲間の魅力を伝えるためには、もうちょっと“引いた”視座の獲得が必要かもしれません。それはネット動画(短編連作)から劇場版(長編)のフォーマットに拡大する際の作法とも密接に関わってくると思います。(森直人/映画評論家)

もうちょっとしっかり画と音楽を見聞きさせて欲しかったです。映画として「ここで走り出して欲しい」というところで、映画として、映しだす音楽として、いったい何が変わるんだろうと期待を膨らませましたが、画と音楽が手に取れなかったので、結局勢いで突っ切られた印象でした。それでも、スガダイロートリオに挑んだ森孝介監督のトゲはちゃんと刺さってきました。(田辺ユウキ/ライター)

今回最も音楽との実験性を感じたのがこの作品。音楽のリズムに乗せて映像を編集するという手法はこれまでのMOOSIC LABでもなかったと思います。だからと言ってMVにもならず、ちゃんとドキュメントしていたうえに、スガダイローを知らない私にも(すみません)ちゃんと楽しめるものでした。トリオのベーシスト東保光さんを男優賞に選出したのは好みだったからですが(すみません)、作品中でも印象的な役回りでした。後半、監督の自分探しにシフトしたところはちょっと残念。(林未来/元町映画館)

友達に「ちょっと最近旅行してきたんだよね~その時の動画観る?」と言われ、その友達が全然知らない友達とひたすらふざけ合っている様子を1時間見せられたのに似た感覚を味わいました。すげえ露悪的な言い方をすればこいつら誰だよ感。共感というものが一切湧いてこない。でも、その居心地の悪さこそ「しろぜめっ!」の醍醐味じゃないですか、納豆的な臭さを楽しむタイプの映画です。(大下直人/Kisssh-Kissssssh映画祭)

オープニングのスピード感が失速することなく最後まで持続する作品。音楽と映像、そして監督の感性、MOOSICらしい作品かな、と思います。(飯塚冬酒/横濱HAPPY MUSIC!映画祭)

スガタイロートリオの演奏するフリージャズに乗せて性急的とも言えるようなハイスピードな編集で展開される男たちのドキュメントロードムービー!スガタイロートリオの三人はもちろん、ノイズ中村さんの魅力も満載で、ハイスピードな編集も相まって目の話せないMOOSIC作品でした。ただ、明確な「ドキュメント」としての狙いが見えず、映画としての強度をが少し足りなかった(松岡/下北沢映画祭運営委員会)

もはやmoosiclabの風物詩、男性監督による崩壊ドキュメンタリー作品枠。しろぜめっ!の過去作は未見ですが、見ても評価は変わらないと思います。演奏以外の良さを見いだす事ができなかったので、せめて演奏の良さが伝わる作品にして欲しかったです。(黒澤佳朗/G-Shelter)

ジャズピアニスト、スガダイロートリオのツアーに密着したドキュメンタリー。ウェブで配信されていたショートムービー集「しろぜめっ!」とは異なり、監督vsスガダイローという対決姿勢が強調されていて、それはとてもフリージャズらしい構図(アングル)。監督が被写体から駄目出しされる展開は、三年前の『サマーセール』を彷彿とさせ、実際カンパニー松尾さんにインスパイアされたような展開もあります(でも半端に終わる)。ダイローさんガチ切れからの「撮れんのか!?」「やってやらぁ」的展開は真実性がありスリリングですが、「撮れんのか?」という問いへの回答がジャズ内の精神性だけに基づいているため、「映画」としての説得力は希薄に感じました。実は僕この映画にちょっとだけ出演しています。ごく一部のミイケ先生好きぜひ。(西島大介/漫画家)

正直よく分からなかったです。(松村厚/第七藝術劇場)

まさか本作が、「サマーセール」や「アカシック」に連なる自意識肥大セルフドキュメンタリーの流れを汲んでいるとは思いませんでした。テンションの高いライブシーン、男たちのバカ騒ぎ、矢継ぎ早に流れていく街の景色…見所に事欠かないロードムービーを、内側から食い破ろうとする監督の意欲は好きですが、結果あしらわれている末っ子感。おかげでスガダイロー先輩の背中が大きく見えた、気もします。(溝口徹/横川シネマ!!)

前説のような映像が流れたときは、どうよ!?と思ったのだが、全部撮ることに意義がある、の言葉通りずっと音楽が流れ、情報がいっぱい詰まった作品だった。しかし音楽きちんと最後まで聞く機会も与えてもらえない飢餓感、「今日」でもなく「明日」でもない「翌日」というテロップが彼らには日々日常であることなのだと思え、特別なこと等起きないこのロードムービーから目を離すことができなくなっていた。この監督の、カメラの自由さをとても楽しませてもらった。監督のみのシーンはちょっとどうかなと思ったので、この部分をいれた経緯を少し聞きたいと思う。(菅原睦子/仙台短篇映画祭)

こういうカッティングというか呼吸で見せるという意図は分かるのですが、それがいいとは思いませんでした。スガダイロートリオさんのプレイはすごそうなんですが、それは伝わりませんし、時折メンバーさんと監督が交わしているパーソナルな会話や監督とスガダイローさんのヒリヒリ(してそうな)関係などは表面だけ見せられているような気分でした。城に赴くということがこの作品のタイトルにまで冠されている意図が分かりません。(田中誠一/立誠シネマ)

「なんだこのアニメのようなタイトルは…?」と、思っているあいだに突如始まったドキュメントロードムービー。演奏する、走る、飲む、喋る。全然、城攻めないし、全員ふざけてるし、中盤カンパニー松尾監督の「テレクラキャノンボール」みたいになるし、なんなんだこれは!?…と思いつつ観終わったら、出演者みんなの事を好きになっているという不思議な現象が起こった。スガダイロートリオの演奏が、これまたスリリングでセクシーで素晴らしい。すっかりファンにさせられてしまった。(榊原/シネマスコーレ)

全編早送りはしんどいです。男たちの旅の楽しさは最高でした。スガさんたちの演奏の凄みが半分も伝わっていなかったので残念です。(コムアイ/水曜日のカンパネラ)

いろいろな人、いろいろな町が見られ、閉じがちな「MOOSIC LAB」に風を吹き込むような自由な開かれ方が魅力の作品であり、監督の編集技術の高さにも感心させられる作品だが、すでにスガダイローを知っている人と知らない人では見方が別れるだろう。時折はさまれる短いライブの映像からもスガダイローの音楽の魅力は伝わっては来るが、この作品は全体として人>音楽なため、まだ彼を知らない人にその音楽の魅力を伝えるには不十分ではないか。(松本CINEMAセレクトSTAFF一同)

スガダイローさんの格好良さといったらない。ピアノを弾いている姿も普段の佇まいも、それでいてランナーでもある。映画はスガさん率いるスガダイロートリオの西南ツアーの様子を描いたドキュメンタリー。僕はスガダイロートリオを愛聴する人ではない。けれどもこの映画を観ていると、まるでトリオのフリージャズを聴いているみたいな気分になる。編集のリズムやカットの選び方がジャズを感じさせるのだろう。観ていて心地よかった。(井上経久/新潟シネ・ウインド))

「しろぜめっ」といってもいつ攻めるのか全く攻めない佇まい。ロックやポップスやアイドルのMOOSICから現れたフリージャズ世界。酒を煽り、 旨いもの食って街から街へと走るバンドの旅は音楽の旅。目まぐるしく切り替わる画と飛び込んでくる音。映像作家と音楽家が、互いに挑発し続けるフ リースタイルのノーガードは、ひとつのプレイ(演奏)となり、セッションを繰り広げ、全1曲の60分の生ライブとなって殴り合ってるようだった。 それは演奏シーンだけでなく、全編に音は漂わせ、映画がプレイ(演奏)をした感覚でした。城を攻めない「しろぜめっ」ではなかった。スガタイロー という牙城にしっかりと攻め込んだ。タイトルは「しろぜめっ」。正解でした。(家田祐明/K’s cinema)

膨大な素材をセッションのように繋いでいく編集は、映画のハイライトをずっと観ているような感じがして、いつ物語が始まるのだろうというモヤモヤを抱えたまま最後までこの調子で終わってしまう。しかし、いつのまにかそのテンポが心地よくなり、スガダイローの魅力にハマっていく。(山﨑花奈美/MOOSIC LAB札幌編主宰)

未着(九龍ジョー)