TOP   ⁄  LINE UP

暁闇(2018)

MOOSIC LAB 2018 【長編部門】準グランプリ・男優賞(青木柚)

『暁闇』

出演:中尾有伽、青木柚、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二

監督・脚本・編集 阿部はりか|音楽:LOWPOPLTD.|撮影:平見優子|助監督:菅沼絵美|制作担当:伊藤希紗|照明:山口峰寛|録音:浅井隆。五十嵐猛吏|衣裳:藤井澪|ヘアメイク:田村友香里|スチール:飯田エリカ|企画:直井卓俊|カラー|STEREO|65min(予定)

本作が初めての監督となる阿部はりかが謎めいたミュージシャン・LOWPOPLTD.の楽曲からインスパイアを受け、中尾有伽、青木柚、越後はる香らフレッシュな俳優陣たちと作り上げるダークでセンチメンタルな青春映画。

◉阿部はりか

1995年生まれ。演劇ユニット「はりか」を主宰し、全ての脚本と演出を担当。 本作が映画初監督となる。

◉LOWPOPLTD.

2016年8月16日から活動中。64MIND所属。

ーーー

◼︎審査員講評

三人の若者の心の喪失を描き、環境音楽のように微睡む音が包み、繊細な表情を持つ作品でしたが、それを一変させる打ち上げ花火に一気にやられました。映画と音楽のぶつかりとは違えども、花火という奇跡的瞬間破壊力が起こした化学反応は凄まじい。それは構成された物語に於いても、喪失する三人の心のノイズを吹き飛ばし、一つにし、物語を展開させた。狙ったのか偶然かはわからないけれど、映像と音という今までにない化学反応が体験できた。ここ数年、映画と音楽が生むその先に飛ぶことを体験できなかった者としては嬉しい。ーーー家田祐明(K’s cinema)

劇中で打ち上げられる花火は、この奇跡の結晶のような作品の誕生を祝福しているかのように思えた。ーーー下北沢映画祭STAFF

屋上の印象的な風景といい、美しい花火のシーンなど、非常に映画的な画作りで素晴らしかったです。屋上の建物の姿からなのか、まるで真っ暗な海に放り出されたような登場人物たちの世界を感じました。そして何よりもかすかに見える光のように希望が訪れてくれて本当に良かったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

ありふれた設定だが、得体の知れない内に秘めた監督の業が画面のいたるところに灼き付いている。ダイアモンドの原石感は21本中ピカイチだ。渋谷区円山町ロケ(ゲリラ?)にも目を奪われた。ーーー岩田和明(映画秘宝/編集長)

音楽のかかり方がエモーショナルでとても合っているな、と感じました。三人が四角に入るシーンが絵になっていて美しかった。バラバラで、どこか孤独、どこか闇を抱えた三人が、その沈黙から解き放たれる瞬間がきっと、彼女彼らの居場所だったように思えます。学校でも家でも駅でも彼女でも男でも本でもない、花火が居場所だった。中尾有伽さんの涙が今も目に映っています。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEMAS)

映像は素晴らしく綺麗。あの屋上どこにあるの?って元制作部の血が騒ぐぐらい。しかしそれだけに、ストーリーラインが少し古臭感じてしまった。居場所がない、という孤独を表すのに援助交際だのリストカットだのという描写は少し乗れなさを感じてしまう。ーーー石田(元町映画館)

傑作になり得る可能性を秘めながら、そこまでたどり着けていない道半ばの感じ。絶望を知らない者が闇を描こうとしたインスタント感が拭い去れず。青木柚くん=LOWPOPLTD.という設定ももっと活かしてほしかった。土手での花火は日本映画で一、二を争う美しいシーンで、印象に残るシーンや表情、言葉はたくさんあったので映画を撮り続けてほしいです。いつか傑作を撮る人だと思う。ーーー林未来(元町映画館)

不用意に扱えば簡単に壊れてしまいそうな少女たちの心を、繊細にすくい取っています。自然で抑制された芝居と、的確に切り取られた情景から、彼女たちの空気感や距離感、その移ろいが伝わってきました。あの花火のシーン、あんなふうに美しい場面はめったに観られるものではありません。ただ、孤独感や疎外感といった感情は、ナルシシスティックな表現に陥りがちです。それでいいのかもしれないし、その向こうに広がるものがあるのかもしれない。監督の次回作が楽しみです。ーーー門間雄介(映画評論家)