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普通は走り出す(2018)

MOOSIC LAB 2018 【長編部門】審査員特別賞 受賞作品/サードウインドウフィルムズ 2018年度日本映画ベストテン第2位

『普通は走り出す』

出演:渡辺紘文、萩原みのり、古賀哉子、加藤才紀子 、ほのか、黒崎宇則、永井ちひろ、久次璃子、平山ミサオ、松本まりか

監督・脚本:渡辺紘文|主題歌/劇中歌 トリプルファイヤー|撮影監督:方又玹|音楽監督:渡辺雄司|企画:直井卓俊|モノクロ|STEREO|100min

東京国際映画祭を始め、海外の映画祭に多数出品してきた渡辺紘文監督が奇才・吉田靖直率いるトリプルファイヤーの楽曲から着想を得て作り上げた、映画制作に悩み苦しみ毒を吐き続ける映画監督の日常。古賀哉子、萩原みのり、松本まりかなど美しき女優陣にもご注目。

◎渡辺紘文(わたなべ・ひろぶみ)

1982年栃木県生まれ。2013年、実弟の映画音楽家・渡辺雄司とともに映画制作集団大田原愚豚舎を旗揚げ。『そして泥船はゆく』(13)『七日』(15)『プールサイドマン』(16)『地球はお祭り騒ぎ』(17)がデビュー以来4作連続で東京国際映画祭に出品されるなど国内外で高い評価を獲得している。

◎トリプルファイヤー

吉田靖直(Vo)、鳥居真道(Gu)、山本慶幸(Ba)、大垣翔(Dr)で結成。今までに4枚のアルバムを発表。「高田馬場のJOY DIVISION」「だらしない54-71」などと呼ぶ人もいた。ソリッドなビートに等身大の歌詞をのせていてかっこいい。人気がある。メンバーはみな性格が良く、友達が多い。

◼︎審査員講評

国内外の映画祭で蛮名を轟かせる異才・渡辺鉱文の『8 1/2』(=悩める映画監督の自意識地獄めぐり)――でありつつ、トリプルファイヤーの楽曲(既成曲)が歌詞の意味も含めて完璧に組み込まれている劇構造にびびりました。脱力&混沌の自分ネタに見せて、実はフィクショナルなパズル的構築力がバキバキに発揮された一本かと。しかも作家としての個性は破格。傑作だと思います。ーーー森直人(映画評論家)

自分でも何が面白くて、何が魅力なのか分からないけど、観てしまうタイプの映画があるけど本作はまさにそういう作品です。白昼夢というか「うる星やつら ビューティフルドリーマー」じゃないけどずっと終わらない夢を見せられているみたい。内輪ネタてんこ盛り、「映画とは何か」問うメタ映画モノ+中年モラトリアム真っ只中、ダメ人間映画のような印象だけどそういう楽な言葉で片付けるのも違う気がする。突き抜けているのはやっぱりトリプルファイヤーの音楽。劇中でも「トリプルファイヤーの音楽はそれだけで世界観が完結しているんで~」みたいな言葉があるけど「その通り!」と激しく同意してしまいました。あと、渡辺紘文監督の本当にダメで、ボンクラで、憎たらしい振る舞い、演技が底なしに不快ですげえなこの人と思いました。やはり映画って疑似体験が醍醐味じゃないですか。戦争や災害の疑似体験もいいけど本当に「嫌なやつ」の疑似体験も出来るって、いやあ映画って本当にいいものですねえ(淀川長治風に)ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

トリプルファイヤーの楽曲の要素が映画の中でいきてた。加えてドラクエをかじってて良かったと思う瞬間の訪れ。手紙をもらった辺りからの面白さが抜群で、『普通は走り出す』というタイトルも良い!ーーー下北沢映画祭実行委員会

リフレインする音楽とその言葉とが、繰り返される映画監督の日常とリンクしていて非常に効果的だったと思います。素晴らしかったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

インタビューパートの爽快感たるや。贅沢な女優の使い方には思わず笑ってしまう。渡辺監督の映像作家としてのクセと、トリプルファイヤーの音楽的なクセが絶妙な位置で混ざり合っている。冒頭の4分間、新宿の街並みを垂れ流し始めた時点で、この後何を見せられるんだろうとドキドキした。ーーー石田(元町映画館)

作家の実力、底力が発揮されている作品でした。全体を覆うシニカルな視線が、観客の後ろからも見られているような、カメラで世界を覗き続ける本物による作品なのだな、というのがわかります。映画製作に悩む自分語りパターンの映画、全然好きじゃないんですけど、すごい良かったです。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

誠実、かつ正直な作品です。閉塞した主人公が世間とぶつかりながら、それでも変わらぬ日々を歩いていく。その後ろ姿に力強さと寂しさを感じて、グッとくるものがありました。本作の瑕疵というのではなく、この手の自己言及的な作品が自己と他者との関わりを描く作品と対比されたとき、その世界がやや小さく見えてしまうというきらいはあると思います。ーーー門間雄介(映画評論家)

冒頭、新宿の街を固定カメラで捉えた映像に音楽を乗せただけなのにずっと目が離せずに喰い入るように観てしまった。濃厚な予感を孕む映像に捕らえられていると感じていながら何も起きないせいで観ている間は意識していなかった音楽の印象が痛烈に残る。音楽をこのように描くのかと驚き!ーーー林未来(元町映画館)

青のハスより(2018)



MOOSIC LAB 2018 【長編部門】公式出品作品

『青のハスより』

出演:栗原類、大友律、渡辺佑太朗、The Wisely Brothers、清水くるみ

監督・脚本:荻島健斗|撮影:米倉伸|録音:菅原彩花|照明:藤井光咲|プロデューサー:松川隼人|企画:直井卓俊|カラー|5.1ch|81min

人気スリーピースバンド・The Wisely Brothersのライブツアーを追ったドキュメントパートと栗原類、大友律、渡辺佑太朗らが演じる若き映像作家の物語が交錯する。ファムファタール的な存在のヒロインを実力派女優・清水くるみが務める。

◎荻島健斗(おぎしま・けんと)

1992年生まれ、京都造形芸術大学卒。卒業制作『ロケーション・ハンティング』が映画学科優秀賞を受賞。イメージフォーラム主催のヤングパースペクティヴ2015にも選出され、高い評価を受ける。本作が初の長編作品となる。

◎The Wisely Brothers(ワイズリー・ブラザーズ)

都内高校の軽音楽部にて結成。真舘晴子(Gt.Vo)、和久利泉 (Ba.Cho)、渡辺朱音(Dr.Cho)からなるオルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調とし会話をするようにライブをするスリーピースバンド。2018年2月キャリア初となる1st full album「YAK」発売。SUMMER SONIC 2018出演。

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◼︎審査員講評

外せなかったのが『青のハスより』。一つの物語とミュージシャンのプライベートビデオが並走し、物語も時間軸を行き来し混乱させるという凝った作りで、音楽との絡み合いも、並走する2つの軸も、絡ませないのにさらっとすれ違わせた。一見、どこがコラボしてるのかと思いきや、このユニークさは捨てがたい。ーーー家田祐明(K’s cinema)>/h3>

時系列の入れ替えや、敢えてエモーショナルな場面を寸断させる編集には賛否分かれると思うが、The Wisely Brothersのキュートさ、男性キャストたちの朗らかさに押し切られた。ラストに一瞬登場する辻凪子も良い。「何も無さ」を肯定するようなロードムービー。ーーー下北沢映画祭実行委員会

主役である栗原類の配役は完璧だった。また、序盤のユーモラスな関西弁が、終盤の切なさを際立たせていた。個人的にはラストの辻凪子に圧倒的な存在感を感じた。時系列の交錯、劇映画とドキュメンタリーの融合という挑戦的な作風であるが、その演出の必要性が薄いとも。 ーーー映画チア部

二つの物語が交わらないまま並行して進んでいくわけですが、そのそれぞれの顛末にかかわらず全体的に明るく描かれているところは非常に好感が持てる部分でした。ホン・サンスのような、あるいはアメリカ映画のオフビートな作品のような、大人が楽しめる”小粋なお話”であったなと思います。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

絵になるシーン、狙って撮っているのかなというシーンが非常に多く、岡山弁や掛け合いが妙に頭に残ってしまいました。基本的にとても静かな作品のように感じましたが、画面で物を言うところがとても映画らしい。男女三人組の、それぞれの、夢と現実、叶うと諦め、その対比が非常によく出ていました。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

なんか見終わった後はドラマパートとドキュメンタリーパートが分離してるように感じてたんだけど、むしろドラマパートが描いてるものが現実でドキュメンタリーパートが描いてるものが夢物語のような、そんな気がしてきて不思議な浮遊感を感じました。ーーー石田(元町映画館)

時系列を切り刻み、物語がちょっと交錯する実験的な構成。意欲的ですが簡単に理解できず、魅力も掴めなかったので、コメント難しいです。役者さんは魅力的でした。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

何気ない場面でも画がカッコ良く、「こう見せたい」という強い意識を感じる。ドキュメンタリーとドラマが交錯する構成は観る方にはわかりにくく、映画として物語に入り込めないままだった。ドキュメンタリーは特筆すべきこともなくごく普通だが、ドラマはかなり面白くなりそうな気がした。ドキュメンタリー部分が弱いので音楽も映画と伴走しきれず、といった感じ。ーーー林未来(元町映画館)

松永天馬殺人事件(2018)



MOOSIC LAB 2018 【長編部門】松永天馬賞(新設)・ミュージシャン賞(松永天馬)・男優賞(松永天馬)受賞作品

『松永天馬殺人事件』

出演:松永天馬、冨手麻妙

監督・脚本・劇中歌:松永天馬|監督補:ALi(anttkc)|企画:直井卓俊|プロデューサー:松永天馬、ALi(anttkc)|アソシエイト・プロデューサー:上野遼平|撮影監督:ALi(anttkc)|撮影:小畑智寛|録音:岡本彗夢、浅井隆|美術:ALi(anttkc)、吉田健児|録音協力:柳田耕祐|制作協力:小峰克彦|制作応援:柳川礼子、大塚安希、三角由紀乃|メイキング・スチール:吉田健児|カラー/モノクロ|STEREO|60分(予定)

松永天馬を殺した犯人 Aとは一体誰なのか?犯人を追う探偵・冨手麻妙だったが捜査は混迷を極めていき…。鬼才・松永天馬が監督・脚本・出演・編集・音楽全てを手がける奇怪な「映画」にまつわる物語は、次第に迷宮入りしていき、前代未聞のラストを迎える…!

◉松永天馬(まつなが・てんま)

1982年東京生。音楽家にして作家にしてときどき俳優。”トラウマテクノポップ”バンド・アーバンギャルドのヴォーカルとしてデビュー。2017年、よりディープな詩世界、”男性”性に踏み込んだキャリア初のソロアルバム『松永天馬』をリリース。俳優活動と並行して自身も映像を監督、脚本、出演とこなす。初監督作品「血、精液、そして死」は自主映画の祭典「MOOSIC LAB 2017」の招待作品となる。また自身ソロやバンドのMVディレクターも多数担当。

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◼︎審査員講評

MOOSICLABという「映画と音楽の実験室」というお題に一番ストレートに答えているように思えました。そもそも映画は複製芸術なんですから映画館だけじゃなく、多様なメディアに展開していくことは自然な事ですよね。ただ、音楽は「ライブ」というその場限りの体験性を帯びる要素があると思っていて、それをどううまくねじ込むかということがMOOSICLABっぽさと思っていました。…で今回、「松永天馬殺人事件」ねじ込んでましたね、力技で。複製芸術って言いましたけど、映画には「映画館」という「事件」が起こる場所…ライブ性を担う所がありましたね。「チコちゃんに叱られる」風に言うのであれば「ぼーっと観てんじゃねえよ」ってところでしょうか。席に座っている限り、事件の目撃者にも、加害者にも、被害者にもなる。安全圏から引っ張り出してくれたこの映画はマジで発明じゃないでしょうか、感謝です!そして、いろんな意味で身体を張ってくれた冨手麻妙さんに圧倒的感謝。きちんと出演作はチェックします。あと、自分が観に行った回、ラストもの凄く戸惑っていたマスク付けたおじさんも忘れられないよ、それも感謝!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

このエンターティナー振りには感服です。娯楽としての、劇場としての遊びを観客に届け、ムーラボのお祭りに華を添えてくれました。ーーー家田祐明(K’s cinema)

特別賞のためにあるような(笑)。「映画音楽」としてのクオリティは流石ガチでだんとつだと思う。「プレイメイト」って曲は最高だな。前半だけなら渡辺とのおっさんツートップでも良かったんだけど、後半の失速も味と言えば味。松永先生のひとりぼっちぶりを助手的に支える冨手麻妙さんが素敵でした。ーーー森直人(映画評論家)

もっとも面白かった作品でした。映画のその存在を問うために構築されるメタ構造も見事でしたし、実験としての表現も興行までを意識した新しさがあったとも思います。一方で、個人的には、観る者(観客)を含めた映画構造が、役者のセリフや演出の仕方によって初めから予見できるのはサスペンスとしては物足りなく、全体性から考えると後になって立ち現れた方がより驚きはあったのでは無いかと思いました。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

「女優の枕営業」や「アタシの出番、少なくない?」などの女優ネタの自意識モチーフを、実際に承認欲求の手段がいっぷう変わっている女優の冨手麻妙という素材の旨味を活かして、絶妙なギャグに加工しデコレーションを施した『松永天馬殺人事件』の創意工夫の姿勢こそグランプリに推したい。実際、楽曲の切れ味は言うに及ばず、『松永天馬殺人事件』の面白さは圧倒的だ。コメディでミステリで、ミュージカルで伝記映画で、ドキュメンタリーでアートで、LIVEで実験映画で、最終的には喜劇『愛のコリーダ』という挑発の狂騒娯楽活劇なんて、観たことがない。自主映画はこうでなくっちゃ。本作の批判で「独りよがり」というピントの狂った発言をする馬鹿を見かけたが、独りよがりで何が悪い。自主映画は独りよがりでなんぼだ。ーーー岩田和明(映画秘宝/編集長)

最優秀男優賞を与えざるを得なかったです。。笑 映画的か、と問われたらそうではない気がしますが、彼にしか作れない作品だと感じました。面白い手法を狙って撮っているので、ハマれば本当に中毒になりそうだなあ、と。音楽も非常に良かったです、やはり。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

これはもう隅々まで松永天馬すぎて、映画として評価していいのか全くわからない!というのが正直な気持ち。ずっと大笑いして見てしまいました。冨手麻妙さんの魅力も天馬さんに負けじと輝いてました。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

松永天馬にしか、それも一度きりしかできない松永天馬ショー。それが松永天馬のためにあるわけではないところに映画への愛と哲学を感じてはからずも感動してしまった。ーーー林未来(元町映画館)

無限ファンデーション(2018)

8.24(土)-K's cinemaほか全国順次公開!

MOOSIC LAB 2018 【長編部門】ベストミュージシャン賞(西山小雨)、女優賞(南沙良)受賞作品

『無限ファンデーション』

出演:南沙良、西山小雨、原菜乃華、小野花梨、近藤笑菜、日高七海、池田朱那、佐藤蓮、嶺豪一、片岡礼子

監督:大崎 章|音楽・主題歌:西山小雨|撮影・編集:猪本雅三|照明:松隈信一|サウンドデザイン:伊藤裕規|企画:直井卓俊|プロデューサー:越川道夫|助監督:張元香織|コンセプトデザイン:宮本茉莉|ヘアメイク:浅井美智恵|企画協力:Breath|協力:高崎フィルムコミッション、玉村町|カラー|5.1ch|102min

『キャッチボール屋』『お盆の弟』の大崎章監督がシンガーソングライター・西山小雨の楽曲「未来へ」を原案に、映画監督×ミュージシャンのコラボ映画祭「MOOSIC LAB」に向けて制作された一作。
 西山小雨の音楽を軸に未来へと向かう10代の少女たちの即興芝居で紡がれた本作の主人公・未来を堂々と演じきったのは、ブルーリボン賞ほか新人賞を続々と受賞している女優・南沙良(『志乃ちゃんはまだ自分の名前が言えない』)。共演の原菜乃華(『はらはらなのか。』)、小野花梨(『SUNNY/強い気持ち、強い愛』)など10代の実力派女優たちによる瑞々しくも緊張感あふれるアンサンブルと、それらを優しく包み込むまっすぐな西山小雨の音楽、そしてベテラン・猪本雅三、伊藤裕規による撮影と録音が、少女たちのかけがえのない一夏を見事に切り取った、世界で一番熱くて尊い青春映画がここに誕生!

◉大崎章(おおさき・あきら)

1961年・群馬県生まれ。『ソナチネ』(北野武監督)『2/デュオ』(諏訪敦彦監督)などで助監督、『リンダ リンダ リンダ』(山下敦弘監督)では監督補を務める。『キャッチボール屋』で監督デビュー。次作『お盆の弟』がヨコハマ映画祭で4冠に輝いた。

◉西山小雨(にしやま・こさめ)

ピアノ・ウクレレ弾き語りSSW。17イチナナで配信中。nightmeal、笹口騒音オーケストラなどにも参加。

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◼︎審査員講評

観終えて少し経つとどんな話だったっけ?と筋立ては曖昧になるのにそこで動いた感情は決して忘れられずに何度も反芻してしまう。音楽に貫かれた衝動をそのまま映画にしたような素晴らしい作品。即興芝居の弱点もあるにはあると思うが、どんな弱点もこの感動が持続する限りすべて打ち消してしまえるような映画。エモーションだけを煮詰めたような、こんな作品をベテラン監督が撮るなんて!西山小雨はもはや2018年いちばんの発見といっても過言ではない。ーーー林未来(元町映画館)

ただの青春群像劇ではない、即興ならではのリアルさがこれまでの青春作品と全く違っていて、演者の演技力にぐわぁ、と集中力を奪われました。本物のような女子高生の会話や沈黙、言い争い、そして中途半端な先生、喧嘩シーンが本当に圧巻です。また、ウクレレ少女と先生のことが、インタビュー形式で、過去が、語られてゆく、そのシーンが意外と印象に残っています。雨降るなかで歌う小雨ちゃん、その涙と雨が重なる様子が切なすぎずエモーショナルすぎず。不安定だけれど、確かな未来がある、物語としても、演者の皆さんへも、そう思わざるを得なかった作品です。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

言葉に詰まってしまうのも、収集がつかない言い合いも、とてもリアルで全編即興は良い方向に作用していると思った。そして不安定な女子たちの中で、ニコニコしながら、たまに背中をぽんぽんしてあげなら、歌っている小雨ちゃんの優しく強い佇まいがひたすら泣けた。ーーー下北沢映画祭実行委員会

小野花梨のおかげで南沙良と原菜乃華が輝いた、と思ってます。南さん原さんはちゃんと感情を爆発させる見せ場がある分、やっぱり目立つけど小野さんが作品としてのバランスを取りつつ静かに演技力を見せつけてくれた。西山小雨の音楽が話に寄り添うどころか、映画に完全に同化。これぞムーラボ!という作品だった。ーーー石田(元町映画館)

良くも悪くも即興としての演技が色濃く作品に現れていたのではないでしょうか。役者のみなさんの熱演はとても素晴らしかったです。ただ、個人的には即興ゆえにカメラが定まらず、演技は写ってはいるが映画の画としてはどうかな、という部分が多かったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

即興芝居で役者の限界を引き出された瞬間をたくさんとらえていてヒリヒリしました。受け手が腑に落ちる親切な構成だと化けたと思います。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

いつか輝いていた彼女は(2018)


4.19(金)-4.25(木)UPLINK吉祥寺にて限定レイトショー
MOOSIC LAB 2018 【長編部門】スペシャル・メンション(日高七海)受賞作品

『いつか輝いていた彼女は』

出演:小倉青、mahocato・やすだちひろ・KJ(MINT mate box)、里内伽奈、日高七海、柳澤果那、日高陽菜子、野仲美穂、東吾優希、近永知里、柿沼美保、藤井咲彩、宮下絵美、谷川雛多、望月紗依、有泉愛衣、勝又啓太、十夢

監督・ 脚本・編集:前田聖来|劇中歌: MINT mate box|監督補・音楽:鯨岡弘識|助監督:岩瀬航、山本航平|撮影:原山星舟|録音:中尾功俊、岩瀬航|照明:島田翔、上田勇熙、稲生賢哉、岩瀬航|制作:ユ・ウンビ、野仲美穂|ギター指導:門野悠帆|カラー|スタンダード|35min

主題歌・出演に人気急上昇中のバンド”MINT mate box”×女優出身の新鋭監督・前田聖来のコラボで描く、女子高生たちの夢と嫉妬を切り取ったビターテイストな青春群像。ミスiDの小倉青主演を主演に迎え、女心の表と裏を軽快な会話劇で紡いでいく。

◉前田聖来

1996年生まれ。2010年から女優として活動。TVドラマやバラエティ、映画などで活躍した後、女優業を引退。「さわる」「朝にかえる」などの短編映画を監督し、映画製作を始める。現在は社会人1年目。

◉MINT mate box

2016年、mahocato (Vo)とやすだちひろ (Ba)、Kj (Gt) を中心に 東京で結成。同年夏、サウンドプロデューサーとして元”ふぇのたす”のヤマモトショウを迎えて楽曲制作を開始。ファッションデザイナーとしても活躍する”やすだちひろ” を筆頭に各方面 から注目が集まっている。

◼︎審査員講評

まだラフなぶんだけ伸びしろがでかそうな『いつか輝いていた彼女は』に強く惹かれてしまった。今回、女子高生メインだったり学園系の青春映画が全体の半数を占めており、それぞれ個性的で良かったのだけど、学校を舞台にすると「画が似てくる」きらいがどうしてもある。その点、前田聖来監督の目線の潜在的スケールは学校を超えているというか。女子同士の自意識の小競り合いやセコいパワーゲームを見つめるシニカル度数が際立っており、数年の推移ながら諸行無常の感触まで漂うところにおののきました。今度は35分じゃなく95分くらいの物語を書いて!ーーー森直人(映画評論家)

学校ってただでさえ、監獄、収容所っぽいのに地方で芸能科がある高校ってそれだけで地獄味が溢れてます。高校生なんて何にでもなれるし、何者でもないのに、「芸能科」という何者になることを求めてくるなんて自意識の生産ライン、フル稼働しているじゃないですか。おかげさまで女の絶妙なマウンティングを取り合う、さりげなくディスり合う会話の見本市に。「読モのくせにマスクする~?」「読モのオーディション受けていたらしいよ」とか彼女たちにとって「読者モデル」でも何者かになっている事がどれだけ脅威なのか痛いほど伝わってくる。地獄を見せられた後だから「最初すげえゆるいな」と思っていたmahocatoの言葉が全然違った印象に聞こえる。あと、抜け出せもしなかった小倉青演じる茜の虚無感たるや。「青春っていつも何かが足りない」と歌い、屋上でギターを壊すシーンはしばらく忘れられそうにない。この街の片隅で茜を見つけたいと思っている。ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

端正な絵作りと丁寧な演出。良い意味で優等生的な作品に2面性を持たせることで幅が大きく広がっているように感じた。なにかもうひとつ突き抜けたものがあれば。とはいえ、監督の今後が一番気になる作品だった。ーーー下北沢映画祭実行委員会

日高七海は伊藤沙莉に似た雰囲気を感じる。悪役が似合う。ムーラボ3作品に出演しており、その中で全く違う役柄があれば確実に推していたが、すべて同じ様な系統の役だったので他のタイプの演技も見てみたかった。ーーー映画チア部

去っていったものと残されたものを、過去と現在で比重を変えて描いていて、非常にうまいなと感じました。ただ、全体的なうねりがもう少しあったら、といった印象を持ちました。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

「彼女」とは、一体誰を指すのか。誰から見た「彼女」なのか、を考えながら観ていました。小倉青さんの存在感たるや!佇んでいるだけで絵になる映画になる君になる彼女になる。人生とは選択である、といつか誰かが教えてくれましたが、そのことをつよく思い出しました。こうだったかもしれない、そうだったかもしれない。けれど、それでも、「彼女」の眼光は輝いている。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

小倉青さん、という存在をこの映画で初めて知ったのだけど恐ろしいほど画面の中心にいるのに相応しい。ここまでくるとただの願望なんだけど、死ぬまで気高い彼女でいて欲しかった。尺がもっと長ければ、と感じてしまうあたりが惜しい点か。ーーー石田(元町映画館)

女子のリアルの描写がすごいですね。。小倉青の佇まいの、ストーリーへの説得力がすごい。。MINT mate box と生きる映画になってるか疑問なので、とても惜しいな〜という気持ちです。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

大きなギターを大儀そうに抱える華奢な身体。持ちきれないその大きさは青春そのもののようで、未熟な力で一度や二度叩きつけただけでは壊れてくれない、本当に荷が重い存在。女の子たちの会話は即興のような生々しい含意に満ちていて良かった。映画として成立しきれていないところが(長編部門なのに!)残念。ーーー林未来(元町映画館)

左様なら(2018)




MOOSIC LAB 2018 【長編部門】公式出品作品

>>>クラウドファンディング実施中!

『左様なら』

出演:芋生悠、祷キララ、平井亜門、日高七海、夏目志乃、白戸達也、石川瑠華、大原海輝、加藤才紀子、武内おと、森タクト、安倍乙、栗林藍希、田辺歩、武田一馬、田中爽一郎、本田拓海、高橋あゆみ ほか、柴田梨奈、近藤笑菜、塩田倭聖、高橋慎之介、こだまたいち、籾木芳仁、小沢まゆ|原作:ごめん|スチール:柴崎まどか

監督・脚本:石橋夕帆|原作:ごめん|撮影監督:萩原脩|録音:柳田耕佑|録音助手:浅井隆、岸本拓之|照明:中島浩一|助監督:田中麻子、泉志乃|美術:中村哲太郎|ヘアメイク:ほんだなお、藤原玲子、夢月、安藤メイ、渡部眞矢|スタイリスト:髙橋晴香|スチール:柴崎まどか|メイキング:岩崎高雄|車輌:小松豊生、中川駿、石橋和夫|ロケ協力:青木康至|編集:小笠原風|企画:直井卓俊|カラー|STEREO|80min(予定)

田辺・弁慶映画祭他多数の映画祭に入選している石橋夕帆がWEB上でカリスマ的な人気を誇る漫画家ごめんの原作を芋生悠、祷キララら注目の若手女優陣をW主演に迎えて映画化。音楽はシンガーソングライター佐野千明とアイドルユニット”・・・・・・・・・”の共作。

◎石橋夕帆(いしばし・ゆうほ)

2014年に制作された『ぼくらのさいご』が田辺・弁慶映画祭にて映画.com賞を受賞した他、複数の映画祭にノミネート。『水面は遥か遠く』がSHORT SHORT FILM FESTIVAL & ASIA 2017 >ミュージックショート部門奨励賞を受賞。

◉・・・・・・・・・

シューゲイザーを中心に、80年代パンクのカバー、ノイズなどの楽曲で歌い踊るアイドルグループ。メンバーはサングラスのようなもので顔が隠れており、名前も全員・。人それぞれ「ドッツ」や「ドッツトーキョー」「てんちゃん」などと呼んでいる。

◉佐野千明

静岡県出身。高校生の時から「乍東十四雄」「昆虫キッズ」などのバンドのライブやレコーディングに参加し、謎の女子高生と噂される。石橋夕帆監督『ぼくらのさいご』の主題歌・サウンドトラックも手がけている。

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◼︎審査員講評

長編の、女子学生を主人公にしている作品の中で私は一番好きだった。登場人物が多いが、それぞれの個性やストーリーがわかり、とてもリアルだった。リアルなことが必ずしもいいことではないが、この作品は、学生時代のつらさや特殊な人間関係について真剣に描こうとしてくれていると感じた。ただ、最後の、死んでしまった女の子が主人公に放つ「みんなだれのこともそんなに好きじゃない」といったようなセリフは、完全には理解できなかった。学生時代の表面上の付き合いの儚さのようなことを言っているのだろうか。また、個人的にタキノ役の田中爽一郎に光るものを感じた。ーーー映画チア部

終盤、ふたりで歩く海岸から詩の朗読への流れで、作品に対する気持ちがぐんと高まる。序盤の由紀と綾のとりとめのない会話の心地よさも思い出させられた。ーーー下北沢映画祭実行委員会

海辺のシーンなど美しく印象に残りました。ただ、好みの問題かもしれませんが、MOOSICの作品としては少し音楽の要素が弱かったのではないかと感じました。祷さんは短い出演でも非常にインパクトを残していますし、声のトーン含め、本当に印象深かったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

この尺でこの数の登場人物が出てくるのに、ちゃんとみんな生きてる。監督は主演の芋生悠さんのことがめちゃくちゃ好きなんだろう、そんな気がした。そういうのが滲み出てしまった作品ってどう考えても憎めない。ーーー石田(元町映画館)

事件も大した事件て事にならない、超ドライな世界。乾ききった田舎救いのない世界で、退屈から抜け出すこともなく、あとでちょっと良くなったくらいの世界。女の子みんな幸せになってほしいなあ、、って思います。。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

刻一刻と過ぎ去る今この瞬間を何より優先する者が優位に立つ学校という箱の中で、友人が死んだことが引き鉄となって立ち止まる暇を手にした少女の(安直な哀しみではない)空虚さが、肌で感じる実感をもって表現されていた。数限りなく作品化された題材ながら、それらに「そうじゃない」と感じたであろう監督の強い意志が現れている。ーーー林未来(元町映画館)

満月の夜には思い出して(2018)



MOOSIC LAB 2018 【長編部門】スペシャル・メンション(大槻美奈)受賞作品

『満月の夜には思い出して』

出演:時吉襟加 竹内ももこ 野島健矢 進藤智美 大槻美奈 木村知貴

監督・脚本・編集 川北ゆめき|音楽・劇中歌:大槻美奈|撮影:近藤実佐輝|録音:浅野就将|スチール:飯田エリカ|製作:中央大学映画研究会|助監督:山下知夏|企画:直井卓俊|カラー|STEREO|75min

カナザワ映画祭、TAMA NEW WAVEなどに入選の若手監督・川北ゆめきが、自身が惚れ込んだ天才シンガーソングライター・大槻美奈の楽曲を元に紡ぐ映画研究会の儚い青春群像でMOOSIC LAB参戦!随所に織り込まれる大槻の演奏シーンは圧巻。

◎川北ゆめき(かわきた・ゆめき)

1994年生まれ。中央大学映画研究会出身。
前作「変わらないで。百日草」では大槻美奈の「オト」をテーマソングに使用しカナザワ映画祭やTAMA NEW WAVEほか多くの映画祭で入選、上映。それ以来彼女に求婚し続けているが何故か実らない。

◉大槻美奈(おおつき・みな)

京都府舞鶴市出身。京都を拠点に活動する22歳の音楽家。2015年活動開始。柔軟でダイナミックなピアノ、カラフルでポップな歌詞、力強く伸びやかな歌声。言葉に思いを乗せた叙情的な歌世界は聴くものを魅了する。

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◼︎審査員講評

ぽとぽと、と涙のように滴り落ちる一作。思い出し笑いという言葉があるのなら、思い出し泣き、してしまうような作品でした。主人公の儚さ、夢見さ、はきっと幼いころ誰もが持っていたのに、いつ、どこで、失くすのだろう、はがれ落ちてしまうのだろう、そのことに気がつくのだろう。大学生、20歳を越えてすこしした年代特有の、大人と子供の狭間で、自分の意味を、生き方を、自身にも周りにも問う、そして空っぽの自分に、ある種諦めを見出してしまうような、そうしたら大人になるってことなのかなって、おもいながら、序盤からぐいっと映画に腕を引っ張られて、観ていました。大槻美奈の音楽が非常に心地よく、それでありながら物語に寄り添ったりリードしたり交差したり。きちんと映画と音楽が合わさっている、と感じました。誰しも、何かを生むために生まれてきたんだとおもっています。そのことを再認識させてくれる作品でした。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

非常に素晴らしかったと思います。演奏シーンとその音楽が、物語のそれまでの流れに名前をつけて規定するような、そんな印象を受けました。決して浮いてるわけではなく、かといって添え物でもなく、カメラの立ち位置を含め、孤独な人生の同伴者たる音楽が登場人物に寄り添っているような世界を感じました。グッときました。素晴らしかったです。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

大学卒業までの短い時の中で将来的について現実と理想について思い悩む姿を同世代の大槻美奈さんの切ない声と歌詞が深くさせている。ーーー下北沢映画祭実行委員会

どうも登場人物のセリフが浮いてるような気がして。映画を作ってる人たちの話なのに、それは致命的なんじゃないだろうか。音楽の使い方も物語と分離してるようにしか見えない。監督が大槻美奈さんに惚れ込んでる(そしてわたしも素晴らしい歌声だと思った)のはわかるだけに歌の扱い方はもっと考えれたんじゃないか、となんだか悔しい気持ちに。ーーー石田(元町映画館)

大槻美奈というアーティストを発見できただけでも大いに価値のある作品と思います。ストーリーが音楽にもっとついていけたら良かったと思いますが、作り手の熱は感じました。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

監督が自分自身の葛藤を映画にしたような印象。それが強い印象を残すところもあれば、他人の悩みを聞かされているような冷めた心持ちになるところも。登場人物の感情の動きはすべて行動と言葉にはっきりくっきりと現れているのでわかりやすいがちょっと情緒に欠ける。音楽の力はとても強く、監督が大槻美奈さんに惚れ込んでいるのがよくわかる。が、肝心の“映画を作るために生まれてきた”襟加について描きこまれていないのが残念。ーーー林未来(元町映画館)

書くが、まま(2018)



2.9(土)-2.15(金) K’s cinemaにて1週間限定ロードショー!

MOOSIC LAB 2018 【長編部門】観客賞・最優秀女優賞(中村守里)受賞作品

『書くが、まま』

出演:中村守里、長谷川葉生、渡邉空美、梅田 凜乃、松原瑚春、大根田良樹、富岡英里子

監督:上村奈帆|音楽・劇中歌:SWANKY DOGS|企画:直井卓俊|プロデューサー:林健太郎|撮影:野口高遠|照明:瀬戸詩織|録音:横田彰文|美術:寺尾淳|衣装:萬行優|ヘアメイク:太田翔子|助監督:長谷川卓也|制作:佐直輝尚|スチール:飯田愛|MA:佐藤こうじ(Sugar Sound)|カラー|ステレオ|77分

主演にラストアイドルから派生したユニット”LoveCocchi”の中村守里、音楽に盛岡のロックバンド”SWANKY DOGS”という異色の組み合わせを率いた上村監督が熱量たっぷりに描くストレートな青春。MOOSIC LAB初の盛岡ロケも敢行!

◉上村奈帆(かみむら・なほ)

自主映画「蒼のざらざら」を監督脚本後、ドラマ「&美少女 NEXT GIRL meets Tokyo」第2話「下高井戸×PM5:20」(古厩智之監督)や、映画「ばぁちゃんロード」(篠原哲雄監督)などの脚本を執筆。‬

◉SWANKY DOGS

岩手県出身の3ピースロックバンド。数々のアーティストと共演しライブバンドとして力をつける。年間約100本に及ぶ全国ツアーや、各地のフェスやイベントにも出演、ライブを軸に活動の幅を広げる。2017年、ミニアルバム「イデア」をリリース。

◼︎審査員講評

書くことでしか心のうちを表現できない少女と、彼女を受け止める養護教諭の物語を通じて、作り手が描きたかったのは心の自由をめぐる闘いだったのだと思います。少女の無垢な心は、いずれ消えてなくなってしまうかもしれない。いや、消えてなくなってしまうと知っているからこそ、かつて少女だった教諭は、彼女の心の自由を守り抜こうとします。脚本、演出、芝居、どれも圧倒的。作り手の切実さが作品の端々まで行きわたり、少女と教諭の心を切実なものとして感じることができました。ーーー門間雄介(映画評論家)

非常にエモーショナルな作品だったと思います。音楽が生み出されていくシーンのドキュメント的な撮り方も面白かったですし、それまでの語り口から大幅に浮くことなく描かれていたと思います。何よりも主人公の世界の中に大人が登場する物語でありながら、それがモブのようではなくしっかりと内面を持った大人として描かれ、主人公と対等に人間として描かれていたことに非常に好感を持ちました。書くということで爆発させるのではなく、そのもっと前の衝動のような、他者とともに走り出してしまうことにも登場人物への愛情のような洞察を感じました。大変素晴らしい仕事をしたと思います。ーーー勝村俊之(シネマ・ロサ/企画・編成)

一捻りも何捻りもするムーラボ作品の傾向からすると、清々しいど直球。今回、若者の生きづらさがテーマの作品が多い中、現実を音楽とともにまっすぐ突き破ってみせた唯一の作品でした。ヒロイン中村守里のひたむきな演技がとても生きてました。SWANKY DOGSの音楽も、サブカルチャーの雰囲気強いムーラボコラボアーティストの中では、時代性も飾り気もないものですが、地に足ついた表現が映画に力を与えていたと思います。ーーー黒澤佳朗(G-Shelter)

テーマは凡庸なれど、オリジナルの作品にしようという気概が感じられる。監督は善き人であろうとする真っ直ぐな性格なのでしょう、悪意の描き方が手ぬるいところが映画としては説得力に欠けている(反面、監督には好感を持てる)。やや存在感が物足りないながら、音楽への愛も真っ直ぐ伝わります。ーーー林未来(元町映画館)

高校生活の一時を上手に表現した作品、主人公がいじめにあいながら思い悩みながら最後は人のために行動を起こす、心の動きなどがよく表現されている。ーーー下北沢映画祭実行委員会

学園もの、女子高生ものが多い中で、子供だけの世界で終わらせず大人との関わりも描いていてよかったーーー映画チア部

「うさぎって、寂しいと死ぬんだよね」ってどこかでよく聞いてきたし、この映画でもその台詞は出てきます。けれど、この映画でのうさぎ、って、学校にいる全員のことのようでした。生徒も、先生も、子供も、大人も、学校そのものも。みんなどこか寂しくて、誰かを求めて、ひとりぼっちだと死んでいるようにおもわれてしまう(決してそうじゃないのに、学校という枠から出るとひとりぼっちってなんて素晴らしいんだとおもえるのに)。いくつも書き留めたい台詞がありました。うさぎになってた学生時代にこの作品に出会えていたのならば確実に救われていました。主人公が左利きでひたすらに、ひたむきに、書いてゆくところが好きでした。主演の中村守里さんの目と手の演技、声にならない声が素晴らしかったです。ーーー久保泉(TOKYO CULTUART by BEAMS)

中盤に至るまでの主人公と保険室の先生との関わり合いの描写は繊細で素敵でした。それだけに終盤の音楽が入ってからが、もはや違う作品じゃないかと思うくらいに熱量がすごくて。監督の音楽に対する想いが熱い分、少し引いた目で見てしまった自分がいた。ーーー石田(元町映画館)