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夜、逃げる(2016)



MOOSIC LAB 2016 女優賞(菅原佳子)/スペシャル・メンション(山田佳奈)

『夜、逃げる』

出演:菅原佳子、瀧内公美、松澤匠、山田ジェームス武、後藤ユウミ、林浩太郎、日高ボブ美 ほか

監督・脚本:山田佳奈|音楽:yonge|企画:直井卓俊

誰かの何かになってみたいふたりの、過去も現状もぶっ飛ばす「究極の嫌がらせ」とは?劇団ロ字ック主宰・山田佳奈監督が関西ガールズバンドの雄・”yonige”とタッグを組み、曲者俳優陣が集結しておくる「どうにかなっちゃいたい」わたしと、あの子の、お話。

◉山田佳奈

神奈川県出身。レコード会社で勤務したのち、2010年3月に□字ックを旗揚げ。第8回公演の『荒川、神キラーチューンは、CoRich舞台芸術まつり!2014春グランプリ、サンモールスタジオ最優秀団体賞を受賞。いま注目の若手劇作家・演出家である。

◉yonige

大阪寝屋川を拠点に活動しているガールズロックバンド。卓越されたメロディーセンスと胸を突き刺さるリリックが話題。ボーカルの牛丸ありさは、オーストラリアとハーフの日本人。全5曲が収録されたミニアルバム「かたつむりになりたい」を7月にリリース。


■審査講評

とても輝いているようには見えない登場人物たちなんですが、全体を通してみると放たれているキラキラに目眩がしました。ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

『マグネチック』の個性と中毒性、『夜、逃げる』の実力者たちの競演や作劇のクレヴァーさにも強く惹かれましたが、このCプロ2本は支持者が比較的多いと予想されるので、僕は個人賞のほうでなんとかフォローさせてもらいました。ーーー森直人(映画評論家)

女子のしっかりした観察・考察に基づいた女子のための元気のでるドラマとしての魅力はあるものの、「映画と音楽のコラボレーション」は見られないため、「MOOSIC LAB」の枠外で評価されるべき作品だろう。その意味ではもったいない作品である。ーーー松本CINEMAセレクト

moosicにも脚本賞があればいいのに!と思わせる一番の作品でした。山田監督はレコード会社から劇団主宰者という経歴だけあって、シナリオと芝居と音楽の構築度はとても高いですね。次作を期待したいです。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

菅原さんサイコーでした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

演者さんの熱量たっぷりの演技とリズミカルに飛び交う台詞、そして音楽によってひとつのひとつのシーンが洗練されていて、心踊りました。装ってばかり(装っていないようなふりばかり)の自分でも、何かのために、誰かのために、どうにかなっちゃうかもしれない。分かってる、分かってる、ん、だけど!の向こう側の光を見せてくれてありがとう。ラストまでじっくり観ないと『Yonige』の存在が分からないのは、ご愛嬌?ーーー川島(下北沢映画祭)

舞台の人なのにショットショットの選択がとても良く、カメラもうまいなあと思いました。全体的に台詞を行っているような、また幾分説明的な言い回しだと感じて観ていたのですがが、役者の方々の表情に緩和されだんだん気にならなくなりました。海辺のシーンはとても良いショットで気持ちがよかったです。音楽も映画に合っていました。主人公が「女優だから」と語った時の歯の矯正ブリッジが何となく彼女の自信と表情を増幅させていて、効いていましたが、もしや今正に矯正中だったのでしょうか。気になる。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

「演劇に励むアラサーどん詰まり女子が奮闘する話って、うう…去年も同じような作品があったような…既視感が…」と思っていましたが、全くの杞憂でした。どうにもならない、どうかしている「私たち」の断末魔のような叫びが絶え間なく続き、いたたまれなさだけで豊洲の地下空間埋められるレベル。こういうとにかく叫ぶとかヒステリックな演技って駄目な日本映画っぽいですが、このシャウトは山田監督もしくは演者本人の中に内在しているものかと勝手に妄想し、愛おしささえ覚えます。あと、音楽の距離感が適度にドライで好きです。「音楽で人生変わりましたーーーー」って大仰な感じにせず、あくまでお話のトリガーにしている辺りとか。現代人にとって音楽は日常に根ざしていて、どうしょうもなれない時、そっと寄りそってくれるもんじゃないかっていうことを再認識した次第です。ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

ブス」「自分の価値の上げ下げ」「私以外の女に負けたくない」「私、29だし」「女子として終わってる」「女って思ってもみない嘘をつく、面倒臭いね」。その女子たちの像を前に、男性キャラクターが「女子に生まれなくて良かった」と言います。方向は違えど、根っこの部分は、MOOSIC LABの代表的な1本『おんなのこきらい』が先取りしていますし、意識をしていないとは思いますが、それでも鑑賞者としてそのリンク先がはっきり分かってしまうので、どうなのでしょうか。あえてそのあたりのワードは避けて欲しかった気がします。ただ、演劇内や漫画喫茶など、狭い空間・人物関係で面倒がごちゃついていて、そういう世界のあり方にヒロインが苛立つ様は、いろんな鑑賞者が共感できるのではないでしょうか。個人的な感想ですが、あのキャバ嬢は何がどうなってもやっぱり好きになれません(笑)ーーー田辺ユウキ(ライター)

小劇団の舞台裏の女性のいざこざを描いた作品。主人公のカナはブスでもてない29歳。もうひとりの主人公はワケあり劇団員で彼氏にフラレたことで彼氏をナイフで刺す。江ノ島がラストシーン、長回しが多く、舞台裏の狭い人間関係はよくある話で新味がないのが残念。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

キャストの芝居を見ている時間は面白かったりするのだが、それが映画としての面白さに必ずしもなるとは限らない。この作品だけでなく、こういうことは往々にしてある。クドカンの映画だってそうだ。これはどう言ったらいいのか、ちょっと言葉に迷ってしまうのだが…。コントと芝居の違い、とも違う。ハッキリしているのは、この作品のなかでは何も起こっていないということだ。悶々とした人たちがあっちでもこっちでも蠢いているだけである。いや、海とか行かずにもっと限定された空間でひたすら悶々としていた方がよかったのかもしれない。身につまされる話としてはよく分かりますよ。萌乃の獣のような身体性には戦慄しました。ただ、やはり加奈子のどん詰まりを台詞だけでなく、見せてほしかった。それを描くことが、映画だと思う。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

キャラ描写も細かいし、皆さん演技上手だったんですが、見ていられなくて‥。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

音楽をことさら強調するわけでも、新たな使い方を呈示するわけでもないのに、曲のために作られたドラマなんだということがストレートに伝わってくるところが良かった。過剰なまでの瀧内公美も上手過ぎる菅原佳子も、そのバランスでyonigeを表現しているんだなあ。音楽にとって今回もっとも幸せな作品なのでは。そしてもっとも隅々のキャラまでが活き活きしていて魅力的だった。ーーー林未来(元町映画館)

魅力的でしたー。青春映画の定番や定石を骨子に、劇団の下世話で世知辛い舞台裏で肉付けしながら、行き届いた演出で堂々の正面突破。キャラクターもシチュエーションもセリフも思いつきや使い捨てがなく、細部まで意図がある作品は、気持ちよいです。ヒロインがイヤホンして雑踏を抜けて行く導入、すれ違う人達の手際よいスケッチが、物語の世界観を即座に信頼させてくれました(外側がちゃんとある、というか)。あと余談。編集が三谷幸喜、松尾スズキ、田口トモロヲらの映画を手がけてる上野聡一さん(そこそこ大御所)で驚いたのですが、演劇人の監督作品は上野さん…ってルールがあるの?ーーー溝口徹(横川シネマ)

今回のムーラボで1番映画としての完成度の高い作品だなと思ったし、ロ字ックの舞台を観てみたくなった。わたしは演劇畑にいたことないけど、きっと演劇あるあるが詰め込まれているのだろうな。東京という大きな街で文化に消費されながら疲弊していく加奈子と、恋愛に全力のエネルギーを費やし自己愛と自意識にがんじがらめになっていく萌乃が、再び出会い、再生してく姿が愛おしかった。ーーー山崎花奈美(MOOSIC札幌編主宰)

役者辞めるか?続けるか?アラサー女子。心の葛藤の中で、見事に人生を突っ走っていました。その気持わかるわ~と、感情移入するし面白い。しかし、映画と演劇と音楽の三つ巴という何度かMOOSICでもあった新鮮な試みも、爆発はなかった。MOOSIC的にいえば、海辺でyonigeが歌ってるくらいの遊びがほしかった。それは飛び道具かもしれないけれど別次元に飛んでいってほしかった。ーーー家田祐明(K’s cinema)

あヴぁんだんドキュ(2016)

MOOSIC LAB 2016 コンペティション 公式出品作品

『あヴぁんだんドキュ』

出演:あヴぁんだんど

監督:ぱくみゆう|音楽:あヴぁんだんど|企画:直井卓俊

関西から突撃の19歳の映画監督・ぱくみゆうがカメラか片手にアイドルの運営に飛び込んだ一か八かのセルフドキュメンタリー。カオスな業界の中で彼女が見つけたものは…?

◉ぱくみゆう

東京都出身。立命館大学3年生として現在京都在住。大学入学後、趣味で映像制作をはじめる。2015年の末にいきなりMOOSIC LAB主宰・直井に“あヴぁんだんどと映画を撮りたい”と突撃、勢いでMOOSIC LAB2016への参加が決まった。

◉あヴぁんだんど

14年7月8日デビュー。別グループのオーディション選考から漏れたメンバーにより結成された「見捨てられたアイドル」。本作撮影中にメンバーの星なゆた脱退。4月に東雲好が卒業。そして6月ハーフ美少女、小鳥こたおが加入。いま東京で最もリアルなアイドルグループ。

■審査員講評

今回の中で一番ムーラボらしい作品だと思います。初期衝動から根気強さまでグッときました!ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

審査員特別賞にはBプロで『光と禿』のカップリングとしてがんばった『あヴぁんだんドキュ』を。これはMOOSIC史上に残るド天然大珍作(笑)。「ちゃんと説明できない子」みたいな編集、「思ったことをそのまま言っただけ」なテロップとか、思い出し笑いしてしまうくらい大好きです。自宅のシーン多すぎでしょ!っていう。元気ない時にまた観たいなあ。ーーー森直人(映画評論家)

カンパニー松尾の影響は明白で、あヴぁんだんどと彼女たちをとりまく現実を「私」の視点からシニカルに描き出し、そうすることでシニカルな「私」を優位に描き出すというスタイルを採用しているのだろうが、結果的に、シニカルな「私」よりもタフなあヴぁんだんどが優位に描き出されているのが作品の魅力。いずれにしても、監督はあヴぁんだんどとも彼女たちの音楽とも「出会い」損ねているように思う。ーーー松本CINEMAセレクト

これはリアル?フェイク?この作品はもうどちらでもよいですね。見ていくうちに、ぱくみゆうさん、あヴぁんだんどさん、ぱくさんのご家族、みんな好きになりました。そして、最悪な柴崎さんまで不思議に嫌いを通り越して興味を持ち始めてしまった。ヤバい。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

これもまた人生のひとつだと思った。(監督の)ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

京都在住の女子大生が東京のリアルなアイドル・あヴぁんだんどに密着するドキュメンタリー。リアルなアイドルのリアルすぎる内幕に迫る様は必見!なのだが、内幕という事実を写すだけではなく、もう少し自分自身の内面を反映できれば、さらに魅力的なセルフドキュメンタリーになったのでは。ただ、アーティストの魅力は非常に良く出ていて、とてもあヴぁだんどに興味を持てました。ーーー松岡宏起(下北沢映画祭)

脱退メンバーや交替の時期のカメラをまわせていたことがこの作品の強さかなと思いました。(撮影前から決まっていたとしても)監督自身の意志をあまり強く感じられなかった分、このタイミングは運もまた作品を映画にするのだと思いました。アイドルが民泊する姿を見て、アイドルのあり方やアイドルってなんだろうと少し考えてしまいました。終始手持ちカメラの不安定さやそこに向けられる彼女たちの表情、近づきながらも踏み込めていけない監督。双方の若さからくる儚さがちゃんと写っていた興味深い作品でした。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

何か既視感があると思ったら、サークル活動でどろどろの人間関係を淡々と愚痴を書いていたあの娘のmixiの日記を読んだ時のあの感じだわ。陰ながら応援したくなる気持ちと若干辟易した気持ちが混ざり合うあの感じ。アイドルを敬愛する女子大生の執念の記録であり、 あヴぁんだんを追ったあの日々を美化した虚偽記憶を垣間見ているよう。あーもっとえげつなさがほしいなー。今年、散々とんでもないドキュメンタリーが上映されたせいか、もっと見世物性が欲しかった。インディーズならありそうな話だから、もっと底を見たい。次は是非とも搾取される側の意地を感じさせるプロレタリア映画を。ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

劇中で監督は、ある人物に向けて「なめられすぎ」など怒りを出しています。確かにその場ではそう憤っているのでしょうが、結局、編集で感情を“付け足す”のは筋道が違う。やるなら、その場でぶつからなきゃ、やり合わなきゃ。ドキュメンタリーの監督として、ズルいと思いました。若い人、未熟な人にオトナがなめてかかるのは、よくあることですよね。でもムカつくなら、闘うならそこでしっかりやるべきだし、そういう動きのある画(形)にしないと。自己防衛の個人ドキュメンタリーになっていました(怒りの矛先の相手のTwitterを、なぜミュートなのか、ブロックしないのか…とか)。確かに監督の心情は汲み取れます。でもせっかくカメラをまわしているのだから。自分の弱さの拠り所に、あヴぁんだんどのメンバーを使うのは、ちょっと違う。「オタクは優しい」という言葉もそうです。好きじゃないものを避けていって出来上がった映像は、映画にならない。結局は何の撮影だったのでしょうか。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

構成がない。もしくはどういう狙いでカメラを構え、編集が為されているのかが分からない。グループ運営の柴崎氏の何らかの意志による撮影続行妨害を受け、それとは裏腹にメンバーたちとの直接の繋がりが出来ていて、ではそこからどうするのか?という一番作品としては「おいしい」ところをなぜ「何となくこうなった」ように見せるのか。本当に何となくこうなっていったということなのか。であれば、そこはドキュメンタリーとして攻め時をスルーしたと言うしかない。脱退したメンバーに対しても残るメンバーにとって、このグループは何なのか、アイドルを続ける/辞めるということは何なのか、突っ込んでいない。後に柴崎氏がクビになったと出て来るが、そこもかなりツッコミどころなのに。ドキュメンタリーとしてやらなければならない、考えなければならない部分がごっぞり抜けおちている甘さに終始している。あヴぁんだんどメンバーの逞しさは伝わってきたが。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

SNSの取りが自体が映画となる『あヴぁんだんドキュ』はゆるめなほんわかムードながら、アイドル以上に不思議な存在「アイドル運営」に切り込んだ新しいアイドル映画だと思いました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

監督の勢いが、奇跡的にアイドルの激動時期を切り抜いていて、貴重なドキュメンタリーになっていると思います。大学生の女の子の焦燥感とアイドルの一瞬の輝きが交錯して、ヒリつきました。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

撮影はヘタクソだし録音もひどい。なのに感じる熱い“なにか”。得体のしれないこの“なにか”だけでMOOSICに参戦し、良いでも悪いでもなく面白い意味でMOOSICの敷居の低さを呈示することに成功している。ネクストステージへと上がったMOOSICだけに、この作品がある意義は大きい。ーーー林未来(元町映画館)

なにが撮りたいのかも覚束ない冒頭のライブから、あヴぁんだんど全員がちゃんと魅力的に映る4人体制最後のライブへ。映像の成長をそのまま出演者の成長に重ねて、好感度が増しました。ーーー溝口徹(横川シネマ)

三歩進んで三歩下がり、前へ進んではいないけど、同じ立ち位置で、その場で高くジャンプする彼女たちアイドルは強い。嘗ての80年代パンクムーブメントのアンダーグラウンドシーンは形を変えて地下アイドルシーンに存在しているようにも思える。ーーー家田祐明(K’s cinema)

神宿スワン(2016)

MOOSIC LAB 2016 コンペティション 公式出品作品

『神宿スワン』制作支援者募集中!(2016.8.31迄)

『神宿スワン』

明治神宮前と原宿の間にある街「神宿」を舞台に、スカウトマン、アイドルたちが大暴れ!?『したさきのさき』がPFFアワード2015で4部門を受賞した俊英・中山剛平×人気急上昇中のアイドルグループ”神宿”の異色タッグが贈る神輿担ぎ映画!

出演:神宿(一ノ瀬みか、羽島めい、羽島みき、関口なほ、小山ひな)ほか

監督:中山剛平|脚本:小林勇貴|音楽:神宿|撮影:枝優花|アニメーション:冠木佐和子|企画:直井卓俊

◉中山剛平

1990年生まれ、高知県日高村出身。2011年就職(サラリーマンになる)を機に上京する。祭日と有給を使いながら映像制作を始める。同作品『したさきのさき』はPFFアワード2015 において、エンタテインメント賞(ホリプロ賞)、ジェムストーン賞(日活賞)、映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)、名古屋賞の4冠を達成。

◉神宿

2014年に結成。2015年に初のフルアルバムをリリースし、今年東名阪ツアーを成功させ、タワーレコードとのコラボレーベル「神塔」も始動。6月末に初の全国流通となるシングルCDを発売。9月には恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンを控える上昇気流まっただ中の原宿発五人組アイドルユニット。


審査講評

基本は特撮ヒーロー+アイドル+アニメーション。アニメの使われ方がLINEスタンプ程度のカジュアルさで、そこがよいなと感じました。現代のアイドル文化や特撮を題材にタランティーノが作ったらこうなったかも。あるいは、やりたいことしかやらない『シン・ゴジラ』のよう。神宿というアイドルについてあまり知らなかったのですが、驚異的に美形ぞろいで伸びしろしか感じません。フリースタイルかましたり、料理を始めたり、「好き」を気ままにぶっこんでいて伸びやか。唐突な終わりも逆に爽快。「MOOSIC LABとは何か?」とか一切考えてなさそうで、コンペ中最大級に自由。大好きな映画になりました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

アイドルも作家も好き放題やってる感じが最高ですね!!!一ノ瀬みかちゃんはつい目が追いかけてしまう魅力を発散していました。アニメーションも可愛らしく、毒ある感じはまさしく原宿。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

確かに予想を裏切る映画でした(笑) 神宿さん(特に羽島めいさん)の演技は素晴らしかったです。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

神宿の個々のメンバーの女優としての可能性を感じさせてくれる作品ではあるが、監督の遊び心あふれる様々な工夫が彼女たちの魅力をよりいっそう高めているかといえばかならずしもそうではないのが残念。彼女たちのマキシシングルに特典としてつくロングヴァージョンのMVとしては必要十分かもしれないが、「映画と音楽のコラボレーション」を謳う「MOOSIC LAB」の作品としては不十分である。ーーー松本CINEMAセレクト

神宿、芝居頑張って好感度高いです!あと、アクションまで取り入れた超豪華なシナリオ構成を短時間内で作り上げた中山監督はじめスタッフ全員を労いたい気持ちです。出来たら、もっと神宿の音楽も聞きたかったですね。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

一ノ瀬みかさんのファンになりました。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

特撮、アクション、アイドル、脱力コメディ・・・などなど多様な要素を盛り込んだチャレンジ精神に拍手!だが、それらの要素がかけ算になっておらず、むしろ良い部分を殺し合ってしまっていた印象。ただ、映画初出演にも関わらず、アクション含め魅力的な演技で映画を背負った神宿のメンバーは素晴らしかった。特に一ノ瀬みかさんには女優としてのポテンシャルを大いに感じました。ーーー松岡宏起(下北沢映画祭)

様々な作品へのオマージュ(パロディかも)を盛り込んでいてちょっとにやにやしてみていました。どこか音と動きがいまいち合わない感じのがあって、はじけたり、すごく笑えるという所まで行かず、どちらかというと、そのバランスの悪さにハラハラしながら、なんというか子どもを見守る親のような気持ちで見終わり、これはもしや監督の罠にまんまとハマったのかもとも思いました。アクション等のシーンもかなり体を張ったと思うのですが、少し緩い感じがして、全体的にどこかむずがゆい映画でした。それもまた監督の罠かなあ。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

神宿をはじめとする「キャラクター」が伝わりませんでした。それぞれいったい誰なのか。どういう背景があるのか。それぞれが何をしようとしているのか。なぜこのキャラクターがああいう喋り方や物の言い方をするのか。なぜそういう仕草なのか。どうして「ゲップが出そう」という口癖なのか。中編という限られた時間の中で、掴めないことがどんどん積み重なってしまいました。「昔の歌なんてどうでもいいじゃない」「未来の歌を歌おうよ」という気持ちは伝わってきます。だからこそ、もっともっと豊かな映像を作れたはず。文字テロップにしても、あえてそれを出す意味、それを読ませる時間の意味。格闘場面的な意味ではなく、脚本を映像化する上でもっと濃い「アクション」を築き上げて、一山をこえて欲しかったです。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

残念ながら、賞レースには絡んでこないのだが、個人的にお薦めしたい作品を。個人的に期待が大き過ぎたため、厳しく観てしまった『神宿スワン』。プリキュアのような展開に笑わせてもらい、なんといっても神宿全員の可愛らしさ。これをきちんと伝えられるだけでも観る価値はある。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

ギャグセンスに一抹の狂気を感じる…。間の抜けた身体と透け透けアニメの共存は果たせていると思う。だが作り手がその世界に安住している。ラストに象徴されるように。そこが残念だった。結果、タイトルも「なんちゃって」なんだやっぱり、と思ってしまう残念さ。中盤中だるみした感もある。もっと踏み込んだらもっと何か出て来る気がした。文字通り、扉の向こう側を見せてほしかった。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

そのメインビジュアルから想像していたガーリー感とはうらはらに、観てビックリの井口昇監督風味。可愛い女の子のちゃんと可愛さを撮っているところが違いと言えば違いか。いやほんと可愛いね神宿。でもこれMOOSICかな?ーーー林未来(元町映画館)

欲張りだなー。神宿かわいいけど、映画がその魅力を増幅させてた…かは、やや疑問で。ーーー溝口徹(横川シネマ)

絶賛製作中となる特報を見たときに、これはスゴイものが来るなという予感があった本作品。しかし、いちばん神宿の音楽がのってる感があったのがエンドロールであった。なぜ劇中で活かせなかったのだろうか?曲を軸に彼女たちが躍動する姿を見たかった。ファンタジック的世界でもアニメ的な世界でも良いが、笑えないのは辛いよ。嗚呼、ギャグは難しい。ーーー家田祐明(K’s cinema)

TOKYO INTERNET LOVE(2016)

MOOSIC LAB 2016 コンペティション 公式出品作品

公式サイト

『TOKYO INTERNET LOVE』

出演:りりか、矢川葵(Maison book girl)、今川宇宙 ほか

監督・脚本・編集:スズキケンタ|音楽:ラブリーサマーちゃん ほか|撮影:稲垣謙一、萩原楽太郎|企画:直井卓俊

昨年のMOOSIC LAB 2015のオープニング映像を手がけた若き映像作家・スズキケンタ×彼自身がMusic Videoも手がけて来たラブリーサマーちゃんの新世代タッグが堂々参戦!

◉スズキケンタ

1996年生まれ、映像作家。10代前半からアニメーション作品や短編映画をネットに公開し、作品は国内外で評価されている。最近ではファッションブランド・BALMUNGやきゅんくんの映像を監督。ラブリーサマーちゃんの一連のMVを手がけている。

◉ラブリーサマーちゃん

1995年生まれ、現役大学生20歳の女子。2013年の夏より自宅での音楽制作を開始し、インターネット上に音源を公開。SoundCloudやTwitterを中心に話題を呼んでいる。昨年アルバム『#ラブリーミュージック』を発売。


■審査講評

おんなのこをこれほど魅力的に撮れる人は少ないのでそれだけでもう一生ついていきますな気持ち。そして音の出ている場所ではなく、音を受け取った人の細部にこそ“音楽”が宿っているという、今まで誰もMOOSICで描いてこなかった音楽の存在意義を何より切実に感じられたのがこの作品。ーーー林未来(元町映画館)

音楽というのは受け手の精神性でだいぶ変わってくるものかと思うんですが、そこを描きすぎずにそれを表現し、なおかつ他者との関係性も描けていて、これが音楽かと納得させられました。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

>「MOOSIC LAB」ではよくあることだが、この作品でも女優たち(りりか、矢川葵、今川宇宙)は魅力的に描かれている。森の中のロケーション撮影をはじめ映像は美しく、ラブリーサマーちゃんの音楽やサウンドトラックも、女優たちと調和している(その意味では化学反応はないのだが)。いっそ男たちを登場させない方がこの作品のポテンシャルを最大化できたのではないか。ーーー松本CINEMAセレクト

スズキケンタくんの才能には非凡なものを感じました。もう少しストレートな編集をしたらどうだったんだろう?もう少し長尺にしたらストーリーも見えてたのかな?素材はまだ沢山ありそうな気がするので別バージョンも拝見したいです。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

RIRIKAさん素敵でした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

チハが光る黒い板を通して、世界と繋がってから、一気に話が加速して引き込まれた!一見インターネットの世界にはなんでもあるように見えるけど、結局なんにもない。でも、チハは自分の意思を持って、現実の世界へ踏み出した。そのシーンにこの映画で言いたかったことが全てがつまってるんじゃないかと思った。そしてあの曲線。冒頭と最後ではだいぶ感じ方が変わって、最後の曲線には心が入って気持ちがのっていたように見えた気がした。ーーー山口(下北沢映画祭)

「あちら」に踏み出した後半の映像と音楽は心地よかったです。ラストの海に向かすショットはとても印象的でした。後半は何となくPVぽいなあと思いましたが、少し震災のこと等も思い出してしまいました。前半の引の映像はいい感じなのですが、二人が向き合って話すショットやおのおのに切り替わってのショットが、なぜか落ち着きませんでした。窮屈さなのかなとも思いながら、少しイライラしました。なので前半物語に入っていくのがなかなか出来ませんでした。前半が分離して見えてしまい、後半だけが印象に残っています。繋がりを感じるシーンは、もう少し何かできたのではという思いがありもったいないなあと思いました。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

監督やアーティストの前情報何にも得ずに観たので、「題名からしてPerfumeとか、きゃりーぱみゅぱみゅみたいなテクノポップみたいのがガンガン流れて、初音ミクみたいなのが出て来て、サイバー深イイ話やるんでしょ」と決めつけていたら、思いのほか手触り感のあるアナログな作品で、狼狽しました。確かに考えてみれば今のインターネットにまつわるコミュニケーションってゼロ年代で描かれていたように匿名性を帯びた不気味なもんじゃなく、本人の人間性やパーソナリティが紐付くもんですよね。各々ペルソナを持って、現実の人間関係の拡張していくもんなんですね。今作でもインターネットとはあくまで場であり、きっかけであり、触媒でもあるんじゃないですか。そこにインターネットがなければ出会えなかった人はいるし、生まれなかった音楽がある。そういうインターネットっていう結びの中で生まれる「愛と青春」がここにあった!!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

おもしろいと思える要素がたくさんありました。ただ、スズキケンタ監督のミュージックビデオや動画サイトにアップされているムービーを超えているかと言うと、そうではない気がします。監督は、自分の世界を「映画」として広げていくことを、いろいろと試行錯誤していたのではないかと想像します。それが本来の資質をちょっとずつ、欠けさせてしまったような。いろんなシーンを接続するものが、雰囲気でしかないです。スマートホンの使い方然り。それでも、サウンドクラウド的なコンテンツ、それに群がるリスナー、自分の音楽世界に浸りすぎて他人の声が聞こえなくなる人物。もっとも「音楽」をキーワードに出来ていると思いました。一方で、キーワードでしかないとも思いました。脚本がもうひとひねりあれば!ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

何というか、いろいろと勿体ない。まず、最初の男女の部屋でのやり取りが長すぎて、この先を観続ける気が失せてしまった。ことはたいして複雑ではなく、なのに描くべき(フォーカスすべき)を描かず、あってもなくてもいいようなことを綴ってゆく。男がデスクトップに向かって踊るくだりはまったく必要ないと思うし、中盤から後半に至る展開は、ただ印象が流れていくように感じ、「もう終わり?」となってしまった。設定やモチーフには見せるべきものがあっただけに、惜しいと思う。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

ラブリーサマーちゃんの歌が「弾き語り」であり、それはそれで良い曲ですが、「ネットレーベル? なのに弾き語り?」という不思議なバランスで、実はわかりやくすネットト的ではない。むしろ、気楽な『電気100%』に「インターネットラブ」を強く感じました。風呂でだべってるだけだけど、あまりにもいい塩梅、食品まつりのトラックも相性良く未来の映画のよう。映像の自体が動画化されたW・ギブソン『ニューロマンサー』の装丁のよう。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

「インターネットと東京と似ている。もうインターネットは特別なものじゃない。」などのキャッチフレーズを聞いて、意識して観ていたんですが、初見では最後までよく分かりませんでした。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

もうちょっと腹割ってもらえたらなぁ…と。こっちが、意味を見つけようとし過ぎたのかもしれないけど。ーーー溝口徹(横川シネマ)

部屋の中を一心不乱に肉体がビートに乗って暴れてる青年の姿は最高だった。音が肉体に入り込み踊りだす。そこには一瞬のかがやきがあった。大袈裟に言えばアップルのコマーシャルでも見てるかのようだった。去年のMOOSICオープニング映像を感覚で撮ったスズキ監督らしく画としては良いシーンが見えてはくるが、全体を通してよく分からないまま過ぎていったのが残念だった。ーーー家田祐明(K’s cinema)

マグネチック(2016)

>>公式サイト


MOOSIC LAB 2016 グランプリ/ミュージシャン賞(SACOYAN)/男優賞(大木宏祐)

『マグネチック』

出演:大木宏祐、高橋あゆみ、和田碧、SACOYAN ほか

監督・脚本・編集:北原和明|音楽:SACOYAN|撮影:守屋良彦

 

したまちコメディ映画祭2015に出品された『ドラマ』が一部でカルト的な衝撃を与えた北原和明監督が、ここ数年の活動停止により伝説化していた福岡在住の天才シンガーソングライター”SACOYAN”とのタッグで贈る虚実ないまぜの物語。

◉北原和明

『ドラマ』がしたまちコメディ映画祭2015に入選。東京都杉並区在住。

◉SACOYAN

視力弱い。足立区育ち。ラジカセに歌を吹き込みながら13歳からギターの日々。18歳MTRを購入→曲投稿。19歳持病が悪化。実家住みで腫れ物のような時間の中SACOYANを開始。11年、福岡に移住。長年の音楽人生を一時停止。16年、録音ボタンを押す。


■審査講評

頭の中をカセットテープが回りだす。SACOYANドキュメントではアナログVUメーターが振れ、ドラマの中ではデジタルレベルメーターが振れるような不思議な作品だった。どこか変な役者たち。感情を持つその顔たちは、前へ前へ押し出されることもなく、物体として佇むようにいる。アナログなカセットテープが回転しながら、規則正しいメーターが振れていく。SN比が悪いカセットテープの音楽が心地よく感じられるようにこの映画には不思議な磁力により、ぬくもりとなって変化する新たなMOOSICを体験した。観客賞は取れないだろうけど、審査員の心は揺さぶられたに違いない。ーーー家田祐明(K’s cinema)

脱力感を装いながらも、ハードコアにあまのじゃくな男のドラマは好きです。もう少しタイトだったらなー。ーーー溝口徹(横川シネマ)

SACOYANの歌声の素晴らしさ!役者に棒読みさせて(わざとなんだろうか?)歌にエモーションを担当させている感じが実験的でかつ成功していた。延々と責め立てる言葉が音楽になっているジャングルジムのシーンは思わず拍手。ドキュメンタリーパートはほとんど印象に残ってないが、歌と同様そこがエモーションを担当していたような、そこに載せられた感情だけは強く記憶に残っている。ーーー林未来(元町映画館)

構成、すごくおもしろいですよね。SACOYANの独り語りパートも引き込ますし。ストーリーパートの演技と編集は正直観ているのしんどかったですが、星野くんが不思議と憎めないのと、告白シーンはすっごい最高でした!!!ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

よかったです。まさかこのご時世にあだち充が自主映画を撮るとは…という錯覚に陥りそうになったが、軽快なラブコメ作としてかなり成功していると思う。とりあえずのテーマは「距離」。東京タワーと電車との。彼と彼女の。日本とアメリカとの。そして思いがけず音楽がもたらした出会いからの、接近。カッティングにときおり香港の血がにおった。これだけ飄々と重みを感じさせずに、かつドラマ(トレンディにあらず)を語りきるのは絶妙なセンスだと思う。センスと言えば、遊園地(?)でのワンシーン。MLBの映像が映る大画面モニターを背にしての会話など、一見さらりとしているが、なかなか出来るものではないと思う。音楽との距離感も絶妙。キャストもすべて素敵でした。ただ、「巧い」だけに終始してしまったという気もする。ネオテニー(幼体成熟)なままで世界が完成され、たとえばそこに、異常や破綻や狂気はあっただろうか。つまり、自身の描く世界を整形するよりもなお強い作家の野心というようなものがどこかに潜んでいただろうかという疑問は残る。例えば、映画的な手つきのセンスでは『君の名は。』より上だと思うが、『君の名は。』を観た時に「いや、『ダンスナンバー 時をかける少女』は超えてないだろ」と思ったような、ロロ・三浦直之が放った圧倒感というようなものがなかったのが心残り。しかし今後絶対伸びると思うので、期待しています。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

女性監督が描くような繊細でナイーブな作品。モテないと思っている男と彼のことが好きな女性との2年間が描かれる。父と母のドキュメンタリーが挿入され不思議な感覚に襲われる。編集が荒く、黒味の転換は良くない。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ

グランプリに推すか、どうするか迷いました。意図がちゃんと分かる映画でした。ツッコミどころはたくさんあります。「この人たちって結局はちょっと狂ってるよね、ヘンな人たちだよね。そうだったら観ていて楽しいんだけどな」と思ったのですが、何となくエモいモードに持っていったりして、さらに男性キャラクターがいまいち立ち切らないまま、シンプルな青春ものに収まっていくところが、逆に収まりが悪くなっていてムズかゆいです。ヒロインが、相手役の男の子について「中学からあなたのことを知っている。いろんな良いところを知っている」から、ダメ男でも見限れないのだけど、それが具体的に何なのかとか。いろんな背景や詰めがちゃんとあれば。リサイクルショップで買った服から出てきた、カセットテープ。その中に収録されている音楽。それを「すごく良かったよ、聴いてみて」というヒロイン。それを受け取っていく男。なぜそういう行動が成り立つのかとか、理由付けは欲しいところではありますが、音楽が人の手に渡っていく流れを「何とかやろう」としている意志がありました。SACOYANさんの楽曲の圧倒感はもちろんのことですが、あのドキュメンタリーパートは、MOOSIC LAB 2016の中でもっとも引力がありました。もっともっと観たい、記録でした。ドキュメンタリーパートは撮影も意識せずしてすごく良くて、だからこそフィクションパートは強引にでももっと人に迫って欲しかったです。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

開始5分で他人に観られないようこっそりサムズアップ。こういう映画観たくてMOOSICLAB観てるんだよ。まず、演者たちがヤバいよね。演技が上手いっていうよりは、フィクションなのに本人が持っているキャラクター性がむき出しになっているのがヤバいよね。売れない芸人より、「月曜から夜ふかし」に出ている素人の方が100倍面白いのと同じ感じ。
小慣れた演技よりも、圧倒的に不格好な人間性の方が記憶にこびりつくよ。そんな演者に内在するキャラ性のせいで 、物語としては真面目なのに何故か笑いがこみ上げてくる自分がいる。川沿いでの喧嘩シーンとかゲラゲラ笑ってしまった。一方で、 SACOYANのドキュメンタリーパートは大切な誰かの喪失感で満ちていて胸をギュルギュルと締め付ける。家族、父への切実な思いに落涙しそうになるのに、狂人たちのフィクションパートに切り替わるせいで涙吹き飛んでしまうじゃねーか!!あまりに対照的な2つのパートだからねじれの位置でそのまま交わらずに終わるかなと思ったら、最後に連結して吃驚仰天。ここで出会うのはあくまでフィクション次元の中の話だけど、そこで発せられる SACOYANの言葉はホンモノ。そんなホンモノの言葉に背中を押され、ダサさしかないアイツが一歩踏み出す姿を見て心が震えないわけがない。生々しくて、気持ち悪い。だけど、感じてしまうカタルシス。嗚呼、アイツらと別れるのが名残惜しい、また、どこかでアイツらに出会いてえよ!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

言い回しや佇まいが、かなりきわどい所を攻めて来ているなあと思った。モノローグはあまり好きではないのですが、映像にかなり助けられていると思われ、ショットは良かったと思いました。ジャングルジムのシーンが先のメリーゴーランドの話とシンクロしていいなあと思った後に本当にメリーゴーランドまで出てきたので、本当のメリーゴーランドはなくても私は良かったかなと思いました。ドキュメントの部分と物語と音楽が最後でクロスするシーンはとても心地よく、そこまで来ると、前半のギリギリの作り込みも気にならなくなっていました。ちょっとラストが甘いかなとも思いましたが、見直すたびにいい意味で印象が変わる作品だと思います。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

「一見平凡に見える人生にも、ドラマチックに音楽が鳴る瞬間があるのだ!」と深く感動させられた。
主人公と音楽の出会い方の運命感、ドキュメンタリーパートがドラマパートの音楽の強度を高めるという意味で、今回最も「MOOSIC」な作品だったと思います。愛すべきキャラクターたち、時に超映画的なシーンの数々にもカンパイ!ーーー松岡宏起(下北沢映画祭)

まさかこんな感動が待っていたなんて!!!今回唯一の涙部門一位です。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

この作品は監督に色々質問してみたい作品です。もしかしたら私の大きな見当違いかもしれないからです。芝居も映像も、若干嘘っぽいというか説得力が無いような、そんな感じが全般に漂ってますが、実は全てSACOYANというミュージシャンの音楽とドキュメンタリーを加味する為の、計算された脚本と演出ではないか?と自分なりに言い聞かせています。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

「映画と音楽のコラボレーション」というよりも、「セルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーとフィクション映画のコラボレーション」にこそ可能性を感じさせてくれた作品。いずれのパートにも魅力はあるが、SACOYANのモノローグによるセルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーのパートに、フィクション映画のパートが(個々のキャラクターのチャーミングさは否定しがたいものの)、強度において拮抗できていないのが最大の弱点か。セルフ・ドキュメンタリー/ホーム・ムーヴィーのパートの圧倒的な生活感がフィクション映画のパートの生活感の希薄さを際立たせ、後者のロマンティック・コメディとしての魅力を削いでいると言い換えてもよい。その意味でおしい作品だが、新たな可能性を感じさせてくれた作品であるのは間違いないため、準グランプリとした。ーーー松本CINEMAセレクト

『マグネチック』の個性と中毒性、『夜、逃げる』の実力者たちの競演や作劇のクレヴァーさにも強く惹かれましたが、このCプロ2本は支持者が比較的多いと予想されるので、僕は個人賞のほうでなんとかフォローさせてもらいました。ーーー森直人(映画評論家)

SACOYAN好きからするとグッとこずにはいられないドキュメンタリーパート…かと思えば、フィクションパートの皆さんが愛しくて愛しくて…作り手と受け手それぞれの精神性が交わって、音楽だなあと。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

愛のマーチ(2016)

MOOSIC LAB 2016 スペシャル・メンション(伊藤祥&笹口騒音ハーモニカ)

『愛のマーチ』

出演:伊藤 祥、上川周作、土居志央梨、宇野祥平、前田晃男、水上竜士、ぽみたん、はるたむ、えりもっこり、みゆぴょん

監督・脚本・編集:伊藤祥|音楽:笹口騒音オーケストラ|撮影:米倉伸|照明:上久保南海、藤井光咲|録音:斎藤大貴、篠原茉莉

<<ストーリー>>
『異性編』サイレント映画。
600 年生きるバンパイア。長い間一人孤独に暮らしている。 ある日バンパイアの前に現れたのは、ピチャヌマという写真たてに閉じ込めら れた怪物。 ピチャヌマとの出会いから、バンパイアの孤独な日々が終わり、二人の生活が 始まる。そして二人の間に愛が生まれたのだが・・・『友情編』実写&アニメーション映画。 ニートの男、守。電話をしながら道を歩いていると、目の前に鹿が現れる。 そして鹿の肛門から口が出てきて守の下半身を食べてしまう。 気がつくと守と鹿の体がくっついていた・・・そして・・・『自己編』ドキュメンタリー映画。 ドローンで遊んでいた、ガングロギャル四人。目を覚ますと何故か 無人島に漂流していた。そして独りでに動くドローン。4人のサバイバル生活が始まる。

◉伊藤 祥

京都造形芸術大学映画学科出身。現在俳優事務所リガメントに所属。初監督作品「いろんなにおいのワカモノだ」が2016年度ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にてスペシャル・メンション賞を受賞。

◉笹口騒音オーケストラ

21世紀の吟遊詩人笹口騒音ハーモニカが新たに立ち上げた新バンド!既に耳のはやいリスナーからは日本のArcade fire、東京のBeirutとの呼び声も高く、総勢8名の腕利きプレイヤーからなるミラクルな演奏は必聴必見。

>>公式サイト


■審査員講評

愛って怒濤だ。美しいものもきたないものも笑いも涙も孤独もクソも生も死も祝祭もすべて飲み込んで押し寄せる圧倒的な愛の波。わずか60分で人類の秘密に触れてしまったかのような心地になりました。良かったというか、もう白旗です。感服です。最高です。ーーー林未来(元町映画館)

※劇中みたくホイッスルの笛の音がリズミカルに鳴り響いている中、「愛のマーチ」の掛け声とともに複数の男女が行進している画を想像してください。
 一粒で三つの味楽しめる。合理主義者どもが跋扈する現代人に超おすすめ愛のマーチ。セリフもなく、色彩もない、不在が良しとされた世界で紡がれる生と死と愛とボーイミーツガール…愛のマーチ。鹿と下半身合体しちゃった…ケンタウロス仕様じゃないから動きにくいぜ、男も友情なんてあてにならないも脆いもん…宇野祥平のセンチメンタルジャーニー…愛のマーチ。ドローンとギャルと無人島…圧倒的偏愛vs流行りの俯瞰…愛のマーチ。今作観ても全く愛とはなんなのか分かる気配はないけど、人間的なセンチメンタルだけが残留する…愛のマーチ。愛にまみれた人間なんて所詮はフリークス的だぜ、異形もんだぜ、愛のマーチ。分からないことが愛おしくて、理解できないけど目の前に転がっているもの全部楽しい。ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

結果、ぼくはグランプリを「愛のマーチ」を選んだ。決して分かりやすい作品ではないが、笹口騒音オーケストラの音が随所に決まる。ぬるく、切なく、泣けてくる。化学反応でもないけども、終わった後、なぜだか人恋しくなり、人に優しくなれるように友を思った。まさに“愛”。画面に拡がる極彩色。そして闇の吸血鬼。不条理な愛のトライアングルは良い騒音となるMOOSICだ。ーーー家田祐明(K’s cinema)

3つのパートの切り替えの塩梅が素晴らしく、飽きさせないのはさすがです。笹口騒音オーケストラさんの音楽が不穏さを掻き立てる…特にモノクロパートの雄弁さは素晴らしすぎる。ドローン…ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

若き天才による『脱脱脱脱17』と『愛のマーチ』。松本花奈監督と伊藤祥監督は、表と裏、王道と異端のように真逆のベクトルを持つ才能ですが、共に寺山修司の匂いを感じたり。ただ両方とも成長の余地という意味で課題は残るはずなので、現時点の評価として「準」の位置に置かせてもらいました。初動の緊張感が凄いわりに、展開力にパワーが欠けるという指摘は可能かと。構成や編集にもっとクリアな判断が入れば、いわゆる「前衛イメージ」の壁を突破できるように思います。ーーー森直人(映画評論家)

笹口騒音オーケストラの音楽/サウンドトラックは素晴らしいのだが、それが用いられているのはほぼサイレントで撮られた白黒パートに限られるため映画と音楽の「出会い」は限定的で、「映画と音楽のコラボレーション」という観点からは評価し難い。ーーー松本CINEMAセレクト

まさに奇才監督と奇才音楽家との異種格闘技的な作品でしたね。3つのストーリーの到着点にあるもの、その答えを汲み取れるチカラが自分にあればもっと楽しめるのにと、少し悔しい想いになりました。これがジェネレーションギャップかも。伊藤監督、将来期待します。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

大好きな世界でした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

前作『いろんなにおいのワカモノだ』同様、3つのストーリーが展開していく本作を、前作以上にエッジの聞いたストーリーながら普遍的な「愛」の物語に仕上げた、鬼才としか形容できない伊藤祥監督のセンスとエネルギーに脱帽。同じく鬼才・笹口騒音とがっぷりよっつで組み合い、二人にしかできない「MOOSIC」作品を作り上げた力量に、スタッフ一同満場一致で特別賞を送りたい、という結論に至りました。ただ、あまりに鬼才過ぎて
観ている側が置いてきぼりをくらってしまうので、もう少し観る側にヒントを与えられるようになればもう一歩先に進めるかなとも思います。ーーー松岡宏起(下北沢映画祭)

3つの物語がどこかで交わるのかなあと思って観ていたのですが、特に交わらず、かといって失望せず、それぞれのパートが楽しめました。ただギャルはどこに行ったのかは気になったままです。多分力強く生息していると思っています。3つと書いたのですが「愛のマーチ」を運ぶシーンはどのパートなのか、もしかしたら4つの物語なのかなとも思いました。モノクロの物語には色と音のない代わりに音楽があり、音楽の使い方のメリハリも良かったのではないかと思いました。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

60分間、きっちりと魅せられました。鹿の肛門に吸い込まれた男。モノクロパートのあの奇人。無人島のギャル。世間や社会や時代性に見放された人物たちのそれぞれの向かう先を、笹口騒音オーケストラさんの音楽がちゃんと後押しをしていました。野心的な一本ですし、あのギャルたちが、いつその纏ったものを脱ぎ捨てていくのかなど、興味がありましたし、映画の入口から出口までキャラクターがそれなりに変化をしています。ただ、3つのストーリーがどうしても観ている側として、結びつかない。それぞれのお話としてはおもしろいけど、結局、監督が自分で演じているということも含めて、監督にしか見えていない世界がありすぎる気もしました。故に、伝わりづらさも多分にありました。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

異色の映像作家、伊藤祥の『愛のマーチ』。かなり尖った作風なため、観る観客を100%選ぶ出来はなかなか。そして異色には100の顔を持つ男、宇野祥平のキャスティング。やはり伊藤祥はわかっている映像作家だ。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

3つの世界がそれぞれ展開していくが、関連性がない。笹口騒音オーケストラの音楽がそれらを貫いているということなのだろう。何かを「みた」気になるのは、映るものが飽きさせないようなペースであれこれとヴァリエーション豊富に移ろいゆくからで(たとえばシカの肛門に下半身を食われたままの宇野祥平、というモチーフは笑えるし絵になっている)、しかし観たそれが「何か」なのかは分からない。分からなくてもいいのだろうか。それはダメだと思う。ハッキリ言ってギャルのエピソードはなぜここに織り込まれているのか不明だし、宇野祥平はあれからどうなったのだ。ノスフェラトゥはそのスタイルだけで、その存在そのものの業(ごう)が見えたとは感じられなかった。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

『愛のマーチ』はドイツ表現主義とドキュメンタリー、さらにアニメーションが交錯するはちゃめちゃな作品。ドローン飛ばしたり(でもオープニングのスタッフロールで「ドローン撮影」とクレジットがあるから、事前にそれがバレてて笑った)、目隠しして離島に運んだり、やりたい放題ですが、ノスフェラトゥの爪とガン黒ギャルの爪を対比させるなど、文脈がギリギリあり好印象。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

内容はさっっっっぱり分かんなかったですが、不思議と楽しめました。笹口さんのライブに通じるものがある、というか、謎の感動がこみ上げてくるのは笹口さんそのものですね。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

「夜、逃げる」とは対極に、“意味”を共有しない映像の連なりが笑いに化ける快感…船が行く遠景や孔雀のタイミングとか、無人島+ギャル+鎌の意地悪な画ヅラとか、誤解も含めて想像力をくすぐられる…というのか。エピソードが2巡する位までめちゃくちゃ興奮!した分、尻すぼみな印象が残った恨みは有りますが、ホントに前半は完璧なんじゃないでしょうか。ーーー溝口徹(横川シネマ)

光と禿(2016)

MOOSIC LAB 2016 観客賞/審査員特別賞/ベストミュージシャン賞(クリトリック・リス)
最優秀男優賞(スギム)/最優秀女優賞(岸井ゆきの)

『光と禿』

公式サイト

出演:スギム(クリトリック・リス)、岸井ゆきの、樋井明日香、武田航平、柴田杏花、竹内海羽、金井勇太、石田法嗣、空美、ひなつけんた、伊東祐輔、中西麻梨香、谷手人、小見美幸、渡部直也、ワンデー檪原、桜まゆみ / 小沢真珠

監督・脚本:青木克齊|撮影:玉田詠空|照明:斎藤順|録音:西山徹|編集:田巻源太|助監督:森脇実|スタイリスト:袴田知世枝|メイク:井手奈津子|制作部:馬淵敦史・中野竜馬・伊勢隼一・八城竜祐|ステディーカム:合屋直樹|スチール:土田祐介|カラリスト:今西正樹|音響効果:西村洋一|フォーリー:渡邊雅文|制作協力:シネムーブ|企画:直井卓俊|企画協力:加茂啓太郎

中年のハゲたミュージシャンと、ちょっとひねくれた盲目の女。
交わるはずのなかった人生がひょんなキッカケで交錯する。
小さな世界で生きる二人にとってお互いが一条の光となって、未来を照らす。
真面目に、シュールに、ちょっと笑えて、ちょっと泣ける、
人生を下手クソに生きている人たちへ贈る応援譚!

◉青木克齊

2005年よりフリーの助監督として映画を中心にドラマ、CM、PVなど様々な現場に携わる。主に佐々部清監督、瀧本智行監督に師事し、山田洋次監督作品などにも参加。『さぬき映画祭2013』をキッカケに初長編「竜宮、暁のきみ」を自主製作し、劇場公開を果たす。

◉クリトリック・リス

大阪出身、スギムのソロユニット。きわどい名前の禿げた46歳、パンツ一丁のオヤジがチープなトラックをバックにパワフルでスカムなパフォーマンスを繰り広げる。人々の生き様をシュールな視点で描いた歌詞が笑えて最後にはなぜか感動して泣けると評判を呼ぶ。


■審査員講評

岸井ゆきのさん、樋井明日香さん、武田航平さんと雰囲気が良かったです。ただ、岸井さんがうますぎるのかスギムさんがやや浮いているような…。ーーー小田祐二(宇都宮ヒカリ座)

どうせ観客賞も獲るだろうなあ……と思いつつ、オーソドックスな『光と禿』をトップに置いたのは、実はいちばん「想定超え」の結果を叩き出したのがこの作品だったから。すでにプロの仕事人である青木克齊監督なら、80点は堅いだろう。ところがまさか95点以上マークするとは!これはMOOSIC史上、最高の「娯楽映画」と言える名作。堅実で無駄のない語りの技術のうえに、クリトリック・リスとの男色さながらのねっとりした絡み(コラボ)が乗っかった。ガチな愛にあふれてる。スギム氏は男優レース最強でしょう。アナル・カントやナスカ・カーのTシャツを着ているのに、島木譲二的な愛敬と人懐っこさに満ちているなんて、無敵すぎます!ーーー森直人(映画評論家)

『脱脱脱脱17』と同様に、物語のなかにしっかりと(リアルに、という意味ではないが)音楽が位置づけられ、物語において音楽が果たす役割が明確な上、岸井ゆきの、涌井明日香という、すでに注目され活躍している女優たちの安定した演技力によって「格上」の作品と感じさせるため、『脱脱脱脱17』以上に低い評価をしづらい作品。「MOOSIC LAB」らしく「置きにいった」感は否定しづらく、『脱脱脱脱17』と同様に、既視感は否めないが、クリトリック・リスの音楽のキモオモシロイ魅力とスギム(クリトリック・リス)のキモカワイイ(?)魅力は十分に引き出せている。すでに評価されている女優たちに支えられた作品であるため、審査員特別賞とした。ーーー松本CINEMAセレクト

第一印象、「これはズルいよね!」この感想は見る前からありました。クリトリックリスさんと岸井ゆきのさんのカップリングはそりゃ最強でしょ。そしてスギムさんが役者までやるなんて。でも、それを裏切らなかった青木監督、これこそプロの手腕。脚本も含め素晴らしい出来でした。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

スギムさんいい人でした。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

禿げで変態と間違えられた男・スギムと盲目の美少女・梢の美女と野獣型ラブストーリー。王道のラブストーリーではありますが、特にスギムのキャラクターが立っており、この映画を観た誰もが応援したくなる人物として描かれていると思います。梢を演じた岸井ゆきのさんの演技もスギムさんの頭と共に輝いていました。力強いクリトリック・リスの音楽が激しい光を放ち、この作品に彩りを加え、観客の心に光を灯す映画になっていると思います。ーーー髙橋洋(下北沢映画祭)

タイトルだけ見るとふざけた作品かと思いきや、こんかいのMOOSICLABの中では、かなり正統派の作品でした。目の見えない少女とおじさんに『街の灯』を思い、また長い道をゆくラストシーンに『モダンタイムス』がかさなり、チャップリンへオマージュとも思えてしまい、監督自身の映画愛のようなものも意図していれたのかなと思いました。ラストシーンは光がいっぱいで中々良いショットでした。昨年もですが、どこか中年の男性がでてくると、悲哀も含め、「おじさん頑張る」作品になる傾向があるかなと思います。年々MOOSICLABとの距離感を不安に思うことがある私にとって、少しほっとするフィールドだなあと思います。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

いい意味で浮いてますよ、いい意味で。新入社員向けのセミナーでに中途入社の社員が混じって格の違いを見せつけるあの感じに似てますよ。
映画的な完成度、相対的に見て全然高いですよね。特にエンドロール部分とか、「っよ、これぞ音楽映画や!」と膝を打ちたくなる。これはひとえにおじさんたちの底力ですね。商業、CM、PV、インディペンデント、色んなフィールドでゴリゴリやってきた青木監督と、46歳になってもハゲでパンツ一丁でシャウトし続けるクリトリック・リス、二人の「おじさんたちの ONCE AGAIN」に落涙。あと、お下品なワードが頻出しますが、作品の中での障碍者描き方は超絶お上品だと思います。「ウェ」っとするような、湿っぽい描写は避け、適度な下ネタと愛らしいおじさんを挟むことでちょうど良い塩梅に。「ちょっと~~24時間テレビくんは見習ってよ~~~~」とこっそり心の中で呟きました。加えて、盲目の女性をさらっと演じきった岸井ゆきのさんの技量に結構支えられてますね。何より可愛い。お餅みたいな頬っぺたむぎゅーって引っ張られているシーン…あまりの可愛さに悶絶しましたよ。岸井さんの頬っぺたの柔らかさを科学の力で再現した団子があったら僕は即購入します!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

クリトリック・リスのスギムさんが主演・音楽となると、「この人のことは、みなさんもう分かっていますよね」という前提や、その個性の強烈さなどで、いろんな情報をすっ飛ばしてついついキャラキターを描きがちだと思いますが、青木監督はきちんと丁寧に、まずは見た目そのまんまの気味悪いオッサンとして映して、劇中でも岸井ゆきのさんに「変な曲だけど、何かいい」という、至極当たり前でありながら、初めて聴く人の立場にもちゃんと立った感想を言わせているところに、好感が持てました。実際のスギムさんはハゲ&パンツ一丁で勝負できているけど、盲目の少女が相手では「おもしろビジュアル」を生かせないどころか、ルックスに後ろめたさを感じている部分も、ほほえましかった。盲目の少女なりに、スギムさんの男性像を、彼が紡ぎ出す音楽像を、情景として浮かび上がらせている。スギムさんの「見えへんけど、見えるものがある」という台詞は、この手の映画のスタンダードすぎてどうかと思いますが、彼女が見えているものが、果たして本当はどういうものなのか、それを想像してみたいと感じました。あと、スギムさんを最優秀主演男優賞に推しましたが、本当は芝居演出の面で、もっともっと色々動かして欲しかったです(何だかんだで格好良すぎますよ、これは)。ーーー田辺ユウキ(CO2宣伝プロデューサー)

『光と禿』は映画としての完成度も高く、満足感も高い1本。そして何より、ミュージシャンであるスギムと映画女優である岸井ゆきのの共演。そして二人ともベスト。これこそ、映画と音楽の共演、MOOSICではないだろうか。ーーー坪井篤史(シネマスコーレ)

シンプルな構成と作りで、一見好感は持てそうなのだ。ただ、ドラマがない。クライマックスがないのに肩透かしを食らった。現実のクリトリック・リスを見慣れているせいか、最早あまり卑猥、ゲス、デンジャラスな印象がないのですが…(むしろ爽快なキャラとパフォーマンスだと思っているので)。一般の若い女性なんかだとやはりああいった印象を普通に持つものなんでしょうか?「クリトリック・リス」というワードでダイレクトに「クリトリス」と連想して嫌悪感を抱くっていうことは、実はほとんどないような気がする。そういうところに、作り手が「ありき」のイメージのなかで作劇をしてしまっている印象を受けた。冒頭、援交なのかと思いきや…というくだりから、次のシーンで痴漢にされてしまうくだりなど、基本的にスギムという人が「一般社会に勘違いされて生きなければならない人」という描写が続くのだが、それにしても作中で描かれるのは優しい(当たり障りのない)世界だと思う。闇がない。クリトリック・リスの爽快なパフォーマンスは、社会に生きるなかで絶望にも闇にもズブズブに浸っているからこそ、その反動で清々しいはずなのに、そこが描かれていないのはやはり片手落ちと言わざるをえない。「クライマックスがない」と前述したが、スギムにとって“勝負”のライブが終わった後、岸井ゆきのと会わずにその晩をやり過ごして、「もうええねん」となっていた次のシーンで、二人が川原で並んで座っている、ここのこと。スギムが岸井ゆきのと対面する時にどういうアクションをするのか、がこの作品で最も重要な「見せ場」だったのではないか。それを外されてしまったのが最大の問題であると思う。
【1】主人公スギムが単に「天使的な人」として描いてしまうことの危険。人間としての異形(良くも悪くも)を映画の手つきで見せてほしかった。岸井ゆきののキャラクターも同様。
【2】こうしたMOOSIC的な作品でよく思うのだが、ライブシーンが入っていればそこが「クライマックス」だと考えてしまうのは、違うと思う。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

『光と禿』は、クリトリック・リスさんの歌と存在感が圧倒的で忘れがたいインパクト。「どうしてあの父にあの娘」という伏線を、「小沢真珠」の配役によって回収してて丁寧さを感じました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

岸井ゆきのさんの演技が本当素晴らしかったですね。私が個人的にクリトリック・リスを好き過ぎるので、この作品がその魅力を生かせているか?というのはちょっと疑問だったな、という気持ちです。監督のスギムさんのライブとのギャップを見せたかった、という談を見ましたが、ライブシーンも売れない中年ミュージシャンという扱いだし、演技もライブもストーリーに閉じ込められられちゃってる印象。エンディングの疾走感は最高!!!焼き飯とライス大が映像化されてるのも嬉しかったです。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

スギムはじめ役者の魅力は全面に出ているが、クリトリック・リスのライブパフォーマンスと普段のギャップを描くことを目指したとあるがおそらく“普通のスギム”に比重を置き過ぎたがために凡庸なドラマになってしまった感がある。クリトリック・リスをよく知る人たちが、スギムのやや照れ演技をきゅんとしながら観る映画。ーーー林未来(元町映画館)

楽曲も役者もよい!のですが、おっさんの造形がピュア過ぎて…。ーーー溝口徹(横川シネマ)

映画を観てライブに行きたくなるというのがMOOSIC LABの醍醐味だと思っている。スギムさん、面白そうだけど、「クリトリック・リス」って名前がちょっとアヤシイしWebで検索するのも抵抗あるし、一人じゃライブ行きにくいな、っていう女子は是非この映画を観て欲しい。ーーー山崎花奈美(MOOSIC札幌編主宰)

印象に残ったことから書けば、「光と禿」。まさに来場するお客さんたちの笑顔に表れる満足感。キャリアを積んだ青木監督の力量が作品に表れている。オーソドックスに、丁寧に、哀愁をもって中年男とろう者の彼女のドラマを作っている。最後に放たれた光に感動すら与える。音楽もキチッとドライブライブの熱。そう、上手い。いい話。楽しませる。9本の中で頭抜ける完成度だと思った。でも、無難すぎやしないか。ーーー家田祐明(K’s cinema)

電気100%(2016)



MOOSIC LAB 2016 審査員特別賞

『電気100%』

監督・撮影・アニメーション・出演:幸洋子|音楽・出演:食品まつり|サウンドデザイン:滝野ますみ|企画:直井卓俊|10分

 

奇才クリエイター・幸洋子がトラックメイカー・食品まつりとのコラボレーション!タイと日本を繋ぐ実写×アニメーション×ドキュメンタリー×フィクションとあらゆる素材を使った異色作品!?

◉幸洋子

高知県生まれ。様々な素材を用い、アニメーション、実写、映像インスタレーションを制作し、上映、展示をしている。2014美術手帖presentsシブカル祭。 グランプリ、TBS digicon6 Japan最優秀賞、新 千歳国際アニメーション映画祭2015グランプリ

◉食品まつり

a.k.a foodman 横浜在住 トラックメイカー/DJ/絵描き


■審査員講評

なんとなく観ているとこれ何が言いたいのかなと思ってたんですが、会話(内容も)も含めて音楽っぽいなこれはと思い出してからは虜に。ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

音楽というよりも音風景(サウンドスケープ)とでも呼ぶべきサウンドトラックと色々なものを寄せ集めたブリコラージュ的映像のコラボレーションは興味深く、その「ゆるさ」や「まったり」感には不思議な魅力があるが、映画館という空間よりもギャラリーや美術館という空間に似合う、映画というよりは映像インスタレーション(現代アート)。「MOOSIC LAB」の枠外の作品だろう。ーーー松本CINEMAセレクト

幸さんのアニメーションと食品まつりさんの音楽、そしてなぜか旅トーク。実力派の両者が、あえてアンバランスな脱力系作品を作り上げてくれて、私はとても楽しく心豊かになれました。嬉しい一作です。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

湯船で痴話げんか に発展してほしかった。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

大画面のスクリーンで、視界全体で鑑賞したとき、この作品は人の思い出の中に入り込んだような感覚を与えてくれました。私も多くの国を旅しましたが、あぁ、確かに旅の風景、音、味、においはこんな風に記憶されているな〜と気づかされました。会話音が響く銭湯を選んだことも、思い出の中にいるような感覚にさせてくれたひとつの要因です。また、登場人物は声だけ、しかも銭湯での会話だけというのも斬新で、このエッジの効いた感性に、特別賞をあげたいと思いました。ーーー高橋恵(下北沢映画祭)

雑誌のページのようなマンガのコマのようなで最初はこれをどう観たらという戸惑いがありました。タイの風景から後半不意に浮遊しながら入ってくるアニメーションはすごく良くて、ここは何回も観たいなあと思いました。大きな画面で見たらかなり引き込まれるのではないかと思います。MOOSICLABなので音楽と思いながらも、使われている音楽より日常に飛び回っている音が音楽のようにも思われ、強く音楽を意識したまま映画を終えてしまいました。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

「はいはい、ちょっとアヴァンギャルドなアニメね」とタカをくくっていたら、いきなり、男女二人がごく自然な流れで銭湯に入り、タイ旅行の話をし始めたので襟を正しました。でも、別に男女二人が銭湯に入っている画なんて描かれないんですよ、ラジオみたいに生の会話垂れ流しで。それがなんか…エロいんですよ…。途中、しばらくタイ旅行の話になるんですが、タイ旅行時の写真、映像、Instagram、facebookの投稿など面の情報が繋がっていき、だんだん何か球体のように見えてきました。人の記憶というのはのっぺりした平面みたいもんじゃなくて、奥行きのあるというか、なんというかVR的だなとしみじみ感じました。とにかく、心地良い狂気に身を任せ、合法的トリップに興じられるムーラボらしい電子ドラックムービーでやした!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)(

特別賞に推しました。食品まつりさんのトラックと映像のマッシュアップに陶酔しましたし、何より銭湯で一緒になる男女が、タイの文化の話の中でナチュラルに音楽の話に移行していくところが、会話として良かったです。ただ、これってそもそも混浴なんですよね。どういうシチュエーションなんでしょうか。導入部分で、友だち関係の男女が「どうもどうも」で一緒になって、「じゃ、また」で去って行く関係性って、何なのでしょうか。そのあたりのお話がちゃんと見たかったです。だから、VJ的というか、どうしても実験映像枠から出ていなかったのかもしれません。ーーー田辺ユウキ(ライター)

これは…いきなり黄色い国に拉致された気分。独自路線すぎて、ちょっと他の作品と同列に並べてどうこうというものではない気がする。新しいジャンルなのか?いやしかし…。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

むしろ、気楽な『電気100%』に「インターネットラブ」を強く感じました。風呂でだべってるだけだけど、あまりにもいい塩梅、食品まつりのトラックも相性良く未来の映画のよう。映像自体が動画化されたW・ギブソン『ニューロマンサー』の装丁のよう。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

今回1番好きな作品です!!内容はただのおしゃべりなのに、映像の目新しさ、それにマッチしてる音楽、尺、全てがちょうどいい湯加減!!!混浴の様子が全く見えなくて逆に漂うエロさがまた良いですね。個人的にムーラボでは、このくらいの尺感と自由さのある作品をたくさん見たいです。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

電子の音のキラキラが湯気で曇って滲んでカドを丸めてぽすんぽすんと耳に落ちてくる、湯けむりタイトリップ。MOOSICでしか実現し得ないような作品であり、またこの作品があったからこそ今年もMOOSICらしさが維持されているという気がする。ーーー林未来(元町映画館)

完成度高けえ!と、堪能しました。音と映像で緻密に誘導される心地よい脱力感。3Dで観たいー。ーーー溝口徹(横川シネマ)

ゆる~い感じの風呂エコーが効いてくる。このトリップムービーはMOOSICの清涼剤。監督は映画で勝負するというよりは、監督に非ず、作家であった。でもMOOSICの中には必ず1本はこの手の遊び心で楽しませてほしい。ーーー家田祐明(K’s cinema)

脱脱脱脱17(2016)



★ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016 オフシアター・コンペティション部門 審査員特別賞/観客賞受賞作品
★MOOSIC LAB 2016 準グランプリ/ミュージシャン賞(the peggies)/女優賞(北澤ゆうほ)/男優賞(鈴木理学)

『脱脱脱脱17』

出演:鈴木理学、北澤ゆうほ(the peggies)、祷キララほか

監督・脚本・編集:松本花奈|音楽:the peggies|企画:直井卓俊|プロデューサー:上野遼平|撮影・グレーディング:林大智|照明:陸浦康公|録音:浅井隆|美術:藤本カルビ|108分

34歳の高校生ノブオと、嘘泣きが得意なリカコ。もがく彼らは果たして永遠の17歳を卒業する事が出来るのか?撮影当時高3の松本花奈がthe peggiesのロックナンバーに乗せて送る渾身の青春映画!既にゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2冠を獲得した話題作!

◉松本花奈

1998年生まれの18歳。中学生の頃より映像制作を始める。監督作に、映画「脱脱脱脱17」(ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞&観客賞受賞)・映画「真夏の夢」井上苑子MV「大切な君へ」(youtubeにて550万回再生突破)など。

◉the peggies

2011年よりライブ活動を開始。2012年、さいたまスーパーアリーナで行われたEMI ROCKSへ出演。3人が持つ個性豊かな音楽性と、フロントマン北澤ゆうほの卓越したソング&リリックライティング、伸びやかで親しみある歌声は中毒性抜群。


■審査員講評

34歳の高校生…彼の執着が何なのかを気にならせながら、最後まで見せ続けるのはさすがです。最後の監督が出てくるところに愛嬌を感じました。ーーー小田佑二(宇都宮ヒカリ座)

僕が特に、深く魅せられたのはずばり3本。この三強は自分の中で甲乙つけがたいので、グランプリ1本、準グランプリ2本という変則的な形を取らせていただきました。若き天才による『脱脱脱脱17』と『愛のマーチ』。松本花奈監督と伊藤祥監督は、表と裏、王道と異端のように真逆のベクトルを持つ才能ですが、共に寺山修司の匂いを感じたり。ただ両方とも成長の余地という意味で課題は残るはずなので、現時点の評価として「準」の位置に置かせてもらいました。あえて問題点として感じたことを記しておくと、MOOSIC LAB ver.として短縮版に仕上げた『脱脱脱脱17』は、編集で正解を出せているかどうか疑問。完全版を未見なので比較はできないのですが、因果関係の説明や伏線として導入される回想パートが、この尺だと停滞や失速を招いてしまう。意味的なつじつまが合わなくてもいいから、現在進行形の「ひと夏」だけをパッケージングしてしまう選択はなかったのかなと。ーーー森直人(映画評論家)

『光と禿』と同様に、物語のなかにしっかりと(リアルに、という意味ではないが)音楽が位置づけられ、物語において音楽が果たす役割が明確なため、「MOOSIC LAB」の作品としては低い評価をしづらい作品であり、「置きにいった」作品と言いたくなるまとまった作品。その意味で「MOOSIC LAB」らしく、既視感は否めないが、the peggiesの音楽の魅力、「女優」北澤ゆうほ(the peggies)の魅力は十分に引き出せているため、総合的にはグランプリ作品とした。ーーー松本CINEMAセレクト

まずは、プロレベルまでの仕上がりで驚きです。この作品の新鮮さは、松本花奈監督の年齢から醸し出されているかもしれないが、作品の力強さは松本監督のアイデンディティから生まれていると思う。そこが彼女の末恐ろしさである。あと、北澤ゆうほさんはこの作品には必要不可欠な存在でしたね。ーーー遠田孝一(プロデューサー)

まるで女優なミュージシャン発見しました。ーーー木下茂樹(テレビ西日本)

最も引き込まれた映画でした!奔放な女子高生のリカコを、ただ見守ることしかできないノブオ。同じく観ることしかできない観客の目線が一致した結果、完全に引き込まれました。リカコのキャラクター表現が的確だったことも大きな要因だと思います。そのほか、10代が撮る映画ということは抜きにして、予想を上回っていく展開や、効果的に挿入される音楽、絶妙なカメラワークに唸りながら拝見しました。あと、「泣くこと」に観客を参加させるストーリーにも上手さを感じました。ーーー高橋恵(下北沢映画祭)

最初19歳の監督が!ということで気になり取りあげた作品でしたが、観たら10代であることなんて考えることなく、やりたいこと、今やれることを全部やってやろうという監督の本気が溢れた作品でした。小さくまとめようなんてことはこれっぽちもなく、かなり無茶なことも試みていたと思います。故に妙に手慣れた感じもありました。それだけ沢山映画を観てもいる人なのだろうなあとも思いました。MOOSICLABの対する本気感から言えば群を抜いていると思えた作品でした。ーーー菅原睦子(仙台短篇映画祭)

正直言って、17歳の時観たら、絶対「脱脱脱脱17」は好きじゃなかったと思う。若さということを傘に着て、甘酸っぱい青春映画を撮って評価されているなんて(しかも可愛いし)解せなさ過ぎて地団駄踏んでいたと思う。しかし、現在、俺の中の青春性は枯れ果たオトナだぜ。最近、彼女も出来たしルサンチマンなんかに依存しません。そういうファッキンオトナな視点で観ると、今作はシン・ゴジラの牧教授みたく「松本花奈は好きにした、君らも好きにしろ」ってことだと思う。だって、出てくる大人たちみんな狂人にみえない?クソぶりっ子の教師、ヒステリックな母親、ストリップ小屋に出てくる妖怪みたいな女ども。本当に松本花奈のオトナ像は相当歪んでいるよ。ご都合主義的な部分も重なってこういう狂人描写がノイズになる所もあるけど、一方でそれが突き抜けて気持ち良さ、共感さえ覚えるところがある。自分たちを支配し、抑圧していた「オトナ」や「世間」に対する苛立ち&反骨精神をフラッシュバックさせてくれる。『脱脱脱脱17』の「脱」は「脱衣」「脱皮」「脱出」といろんな言葉を代入することが出来るけど、自分は「脱獄」という言葉をあてはめたい。嘘泣きメンヘラのリカコ、おっさん高校生のノブオは何かを探して求めて旅をしていたというより、自分の弱さが作り出した自意識の牢獄からなんとかして脱獄したいように見えた。むしろ、松本花奈自身が大人とのしがらみとか世間の評価という檻から脱獄したかったんじゃないか。ああ、これは松本花奈なりの精神的脱獄映画、松本花奈の網走番外地だ!!!ーーー大下直人(Kisssh-Kissssssh映画祭)

伸びしろは一番感じた作品です。北澤ゆうほさんの動かし方は、17歳当時の松本花奈の感受性だからこそできると思いました。だけど、「オッサン」をはじめ各キャラクターが弱かったです。ユーモアとせめぎ合わせるべき、非情さが物足りなかった。劇中の「一生懸命やってんだよ」という一言の説得力ってすごく重要なのですが、結局どれも動機付けが生優しい。ストリップ劇場が出てきて、でも若い登場人物たちはやっぱり脱げない。映画的に守られる。嘘泣きが得意なヒロインが、嘘泣きすらできない状況なのに。そこをどのように踏み込んで描くかに期待していましたが、驚きが満たされませんでした。物語の中でクローズアップされている人物だけが可哀想なのか。ストリップを見にきて、金を払って毎回野次を飛ばすお客はどうなのか。各キャラクターに説得力を持たせる背景の動機付けが薄く、スタイルだけになっていたのが、乗り切れなかったです。ーーー田辺ユウキ(ライター)

「できちゃってる」感がある。非常にクレバーで、熱意もあり、世界の細部にも目配せが行き渡っていて、「映画」というフォーマットを巧みに操っているように見える。が、果たしてそうか。問題はノブオさんである。ノブオさんが父親探しのリカコに引っ張られてストリップ小屋に収まったあたりからまったく存在が消えてしまった。で、思い出したように「こそか!」というところでイキナリ飛び出してしまう。あそこでノブオさんが場をさらってしまったために、リカコがここまで来たケジメがつけられずに終わってしまった(もしかしてそういう意図なのか?)。その後のキスはまったく無用だ。10代女子の融通無得感でリカコの言動がキャラクタライズされているのは、作り手にそういう人の実感が分かるからだろう。しかし、ノブオさんはそうはいかない。ノブオの過去エピソードはもっと早いタイミング(ストリップ小屋に落ち着く前かその直後)で出しておくべきだったと思う。それだと作り手としては手がなくなってしまうおそれがあるかもしれないが、むしろそこからノブオの本当の意味での物語を立ち上げるべきなのだ。リカコは結局、何を乗り越えてどこに向かうのだろう。それぞれ最低な両親とはついに向き合わず、ノブオに応援してもらってプールを泳いで縦断した。そこでファナティックにモリアガったふたりと一緒に観ているこちらもジーンとくればよいのだろうか。そうではないだろう。むしろ不安になる。そういった問い自体が「既存のレール」であって、お門違いな老婆心だというのならば、「映画」というフォーマットを意図したこの作品の佇まい自体が「嘘泣き」の類と言えまいか。リカコがギターを奏で歌う時、彼女は役を演じている北澤ゆうほという「ミュージシャン」の状態で映っているように見えてしまう。リカコは何者でもないただの17才なのではないか。そこをうやむやにしたままに「できちゃってる」感じに見えるのが、どうしても引っかかってしまうのだ。「関係」をストーリー展開のツールとして扱ってはいけない。「関係」そのもの、核たるものをえぐり出す執念を持ってほしい。ーーー田中誠一(立誠シネマ)

『脱脱脱脱17』は主演のthe peggiesのボーカルさんが、夢眠ねむ×篠崎愛的な魅力があり、演技も歌も良かったです。テーマ的に母親への不信と恐怖が強く、監督は元子役だそうですが、「子役」という「人間が一番素直でいていい年代に自由を奪われた存在」による人間不信故かなと、ポップな作風ながら根深いもの、闇を感じました。ーーー西島大介(DJまほうつかい)

18歳の女の子が撮ってるとは到底思えない作品‥!!!おっさん高校生や熟女のおっぱいを映像に出したいと思います?フツー?北澤ゆうほちゃん、目の離せないヒロインぶりでした。演技力が伴えば無敵でしたね!主題のわりにコメディ要素が多くてもったいなく感じました。ーーー黒澤佳朗(沖縄G-Shelter)

北澤ゆうほの魅力に尽きる。ややむっちりして眠そうな容貌が可愛すぎて悶絶。声もすてき、歌もすてき。でもちょっと映画として音楽の使い方が凡庸で、MOOSIC的には評価を上げきれなかった。ーーー林未来(元町映画館)

昨年のムーラボで上映した前作「真夏の夢」は、招待枠でなくコンペ枠だったらグランプリに推したいくらい好きだったのですが、今作については「MOOSIC LAB verって?」という事に引っかかりつつ鑑賞。いくつかの作劇上の「?」が、短縮版ゆえなのか、元々そういうものなのか…キスシーンの置き所とか、父親の再登場に向けた布石の有無?あたりで傾げた首が傾いたままで、やや印象が散漫に。ヒロインの母親像は、こういう人物像を可視化できる世代が遂に現れたー!?と感心しました。ーーー溝口徹(横川シネマ)

セーラー服のまま水に飛び込むというビジュアルだけで、胸がきゅうっとなり、たまらなく切ない気持ちになるのだ。いつの日からか、足を止めてしまったわたしたちへ、女子高生監督 松本花奈が「進め」というエールを送ってくれている。松本花奈監督にはこれからもどんどん成長していって、全力でエンターテインメント作品を撮って欲しい!ーーー山崎花奈美(MOOSIC LAB札幌編主宰)

十七歳の反抗。すべてを脱ぎ去り、少女は女になるのだ。しかしながら、音楽的な要素を濃くし、コンパクトになった本作。なんだか新鮮味はより薄れてしまったのが残念でもある。ーーー家田祐明(K’s cinema)