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いいにおいのする映画(2015)


MOOSIC LAB 2015 グランプリ/観客賞/ベストミュージシャン賞(Vampillia)/最優秀女優賞(金子理江)/最優秀男優賞(吉村界人)/男優賞(micci the mistake)

『いいにおいのする映画』

監督・脚本:酒井麻衣|音楽:Vampillia|撮影:伊集守忠|照明:小川大介|録音:上條慎太郎|美術:成尾美奈|スチール:飯田えりか|出演:金子理江、吉村界人、Vampillia、中嶋春陽

★夢見がちな少女レイは幼なじみの少年カイトを通じて”Vampillia”と再会し、ひょんな事から照明技師の道を歩み出すが…。京都造形芸術大学在学時から各地の映画祭などで注目された新鋭・酒井麻衣×ブルータル・オーケストラ”Vampillia”×ミスiD2015グランプリ・金子理江×新進気鋭の俳優・吉村界人W主演で贈る異色の青春ファンタジー。(モノクロ・パートカラー/73分)

◉酒井麻衣

1991年生まれ、長野県出身。京都造形芸術大学卒。処女作『棒つきキャンディー』、永瀬正敏出演『神隠しのキャラメル』、卒業制作『金の鍵』、ショートストーリーなごや『笑門来福』を監督。京都で社会人生活を経て本作を制作する為に上京。「映画」を続けていけるよう修行中。

◉Vampillia

大阪が産んだ美しく毀誉褒貶に満ちたブルータルオーケストラ。タスマニアギター、ノイズギター、ベース、ピ アノ、ストリングス、ツインドラム他10数人のメンバーで構成された壮大なライブは必見。2015年はオーストラリアでツアーを行い、『KINGDOM HEARTS トリビュートアルバム』にも参加するなど国内外で活躍中。


【審査講評】

★作劇レベルは拙いながらも、映像や世界観のこだわり、アーティストとのガチなコラボなど、必死の熱量を感じさせた。劇中、登場人物の台詞を借りて「表現論」的なことが直截に語られているので、今後の課題は監督自身がよく自覚されているんじゃないかと思います。(森直人/映画評論家)

★酒井監督にとって未来が拓けた映画ではないでしょうか。過去作品を知っているかどうかではなく、「音楽」というテーマについて、映画/映像作家が、作り手なりの捉え方で、サウンド面だけではない、「音楽」を形づくる様々な側面・要素をちゃんと表現している。8作品中でもっとも有機的で、意思を強く感じました。(田辺ユウキ/ライター)

★金子理江、吉村界人という2人の今しかないその瞬間のきらめきがまだ胸に刺さっています。Vampilliaの音楽が持つドラマ性が映画全体に通底する軸となっていて、観終えて思い返すとどのシーンにも音楽が響いていたような印象が残りました。モノクロにもちゃんと意味があり、色が付くシーンはもういちどスクリーンで体験しなきゃ!と強く思えるほど感動的。これが3時間の作品でも飽きずに観ただろうと思います。映画の魔法が確かにここにありました。(林未来/元町映画館)

★ 酒井監督といえば、第一回目のKisssh-Kissssssh映画祭にて「神隠しのキャラメル」で入選を果たした、麗しの美女であり、そんな彼女がMOOSICLAB2015で新作を撮るなんて心が小踊りせずいはいられないのであります。そんな色眼鏡を差し引いても、今作はATG的な実験精神に溢れた怪作であると断言できます。女子高生が夢と恋に奔走するという超王道のフォーマットに対して、酒井監督節とも言える可愛らしさと不気味さが混在するダークファンタジー色をぶち込んでおり、まあ気持ち悪い。ほめ言葉です。まあ気持ち悪い。その上、vampilliaの持つカテゴライズ不可能の奇怪な音楽が溶け合い、古今未曾有の作品になってますよ、こりゃ。さらにさらに、主演の金子理江と吉村界人の現実離れした存在感は今作の世界観にジャストフィット!この映画をより強固なものに!特に、ラスト10分は、そのエモーショナルさによって貴方の腰は砕けるでしょう。このくすんだ世の中の色彩を取り戻すのは夢や恋など現実を変容させる「魔法」であるということを思い知らされます。全編、ぼーっとしている場合じゃないぜ、青春の魔力を刮目せい!(大下直人/Kisssh-Kissssh映画祭)

★監督が挑戦をしている映画だと感じました。ラストのVampilliaさんのライブシーンは、かなりきます。よいです。(飯塚冬酒/横濱HAPPY MUSIC! 映画祭)

★圧倒的な作品としての完成度。音と光の魔法がかかった間違いなく「MOOSIC」の枠組みからはみ出る超傑作ファンタジー!Vampilliaの魅力文句なし!ですがそこに頼り切ることなくぶつかった酒井監督、そして説得力のある演技で役を演じきった金子理江さん&吉村界人さんの主演陣にも大拍手!!(松岡宏起/下北沢映画祭運営スタッフ)

★”物語の根幹、『魔法』を画面から感じられたら間違いなくグランプリに推していました。モノクロの世界で、魔法のかかるシーンでカラーが映える演出意図はすごく良く分かるのですが、逆にモノクロ映画という『魔法』にカラーが負けてる気がして、最後まで私は魔法を信じる事が出来ませんでした。Vampiliaが物語の世界観に非常に深く関わっているのが伝わりました。もの凄いせめぎ合いがあったのだろうと容易に想像つきます。ベストミュージシャンにするか悩みましたが、底知れない魅力がまだまだ発揮されていないだろうと思い、ミュージシャン賞に推しました。アーティストの演技も本当に素晴らしい。モンゴロイドさんも推したかったですが、重要なピエロのミッチーさんを男優賞に。最優秀女優賞に金子理江さんを推しましたが、思えば今回正当な主演女優の出る作品が他に無かったです。モノクロの世界でピュアな魅力がキラキラ輝いて見えました。(黒澤佳朗/G-shelter)

★Vampilliaの映画ということで、例えば轟音と叫び声が1時間続くようなアンダーグラウンドな作品を想像しましたが、意外にもさわやかで端正な青春映画。キューブリックの初期白黒映画にも似た、丁寧さの中にも不穏な感じが潜んだ絵作りには映画の品格があり、コンペ中では突出。静的な映画に生命を与えてるのはイイ顔ぞろいのVampilliaメンバーで、特にミッチーさんの怪演技には『ダークナイト』のジョーカーを感じました。「今の映画」って感じは希薄ながら、フェリー二好き、ティム・バートン好きはハマるだろうレトロな普遍性があります。古典を踏まえた上で新しい映画。主演のミスiD金子理江さん、吉村界人さんの王道感も良いです。反面、ライブシーンはあまり上手く撮れてない気も。個人的にはラップで会話する真部脩一さんの演技がツボ。本編中、突出したデタラメさを感じました。(西島大介/漫画家)

★ミスiD2015グランプリの金子理江さん、新進気鋭の吉村界人くんはとてもドラマにマッチングしていて芝居がうまい下手とかは関係なく昨年の森川葵のように存在感を感じました。モノクロ映像とパートカラーの描き分けのセンスの良さ(パートカラーの音楽シーンは素敵でした)、Vampilliaのメンバーのお芝居も音楽もうまく映画に溶け込み、彼らの音楽も良さも魅力的に伝わって来て私の中では断トツのベストです。昨年の「おんなのこきらい」のように単独での公開の可能性も感じました。(松村厚/第七藝術劇場)

★中盤のライブシーンまでは、かなりワクワクしていたのですが、終盤で失速した印象を持ってしまいました。最後のあの二人の姿があるのならドラマは運命的・悲劇的に終わってもよかったのではとか、mongoloid氏とレイの間に反発とともに共鳴があればとか、脚立…?とか。監督の次回作が観たいです。酒井監督と、「マイカット」小根山監督と、去年の「おばけ」坂本監督のオムニバスとか、直井さん作ってくんないかな。(溝口徹/横川シネマ)

★スタンダードとモノクロ・パートカラーがこの作品にはとても合っていたと思う。絶えず揺れているカメラもうるさくはなく、どこかはかない少年少女の関係は、全然違う映画なのにずっと前に観た石井監督の『ユメノ銀河』を思い出させた。Vampilliaの音楽が作品に合っていることもこの作品を印象づける大きな要因だったと思う。脚立から覗くヴォーカルの人が、まるで吸血鬼が棺桶にはいっているようにも見え、沢山の発見があり、とてもくすぐられる要素の多い作品だった。(菅原睦子/仙台短篇映画祭)

★展開にかなり乱暴な部分が見え隠れしながらも、映画で物語る(映画であろうとする試み)ということと音楽が立ち上がる物語(音楽が感動的であることを物語る)を同時に成立させようとしていたと思います。もったいないなと思ったのは、カイトのお母さんがあまりにも無個性というかモデルさんのように見えてしまい、それなら顔を出さないほうがよかったのでは、と。消去法の考えになっちゃいますが。ファンタジーを実写でやることの難しさではあります。それと、タイトル。その根拠を作品中に見いだせず、最後の最後にそれを保証するようなことをしていますが、そこまでしてこのタイトルにする執着があるなら作品の中に落としこむべきだとは思いました。そして、はっきり言ってしまうと、私が今回、評価できる(勝負しようとしている)と感じたのは『いいにおいのする映画』だけです。この作品はどこに向かおうとするのか、誰とそこに行こうとするのか、それにはどういう方法を用いるのか、ということを明確に観ているこちらに伝えてきていたと思います。作り手、演じ手、ミュージシャン(演じ手でもある)がそれを見据えられていると思いました。あのVampillia相手にそういうコンタクトを振ることができた酒井さんは大したものだと思います。自信がないと出来ないでしょう。ただ、そうしたビジョンの共有がこの作品最大の演出であり、個々の細部での演出は力不足を感じたことも確かです。仕掛け(ここでは魔法というべきか)の部分は充分に伝わる表現(装置)になっていましたが、俳優の身体への眼差しが今ひとつと感じたのです。同時に、「音」で物語るということに関しても他より抜けているわけではない。しかしこの作品は次を観たいと思わせるものでした。野心高く、より鋭く深い次作、期待しています。(田中誠一/立誠シネマ)

★『いいにおいのする映画』ってタイトルのふわふわ感。だけどこの映画は全然浮ついてない。酒井監督がファンタジーを昇華させた!(大浦/シネマスコーレ)★Vampilliaの持つ世界観とファンタジーをうまく融合させ、きっちりと劇映画に昇華させた酒井監督の手腕に圧倒された。先日、名古屋を舞台に制作された酒井監督の過去作『笑門来福』を観た。雰囲気は真逆のほっこりした作品だったが、作中の山場で観客の心をバシっとつかむのがうまい。そこが本作でも発揮されていたと感じる。どことなくエドワード・ゴーリーの絵本の中のような、寂しいモノクロの世界に、光が灯る瞬間はなんともエモーショナル。映画の節々から真っ直ぐに監督の愛が伝わってくる良作だった。(榊原/シネマスコーレ)

★”キャスティングも脚本も演出も整っていました。吉村さんはキャラクター的に衣装が難しそうなのに上手いスタイリングでした。WWWなどロケハンも工夫があって、生活にある景色に夢を見るのがうまいんだと思いました。(コムアイ/水曜日のカンパネラ)

★もっとも真面目に「MOOSIC LAB(映画と音楽のコラボレーションによる実験室)」というお題に取り組み、かつもっとも高い完成度の作品だった。脚本も担当した監督の、Vampillia の音楽やバンドのメンバー構成を見事に物語世界に組み込み、主演の若い俳優たち(吉村界人、金子理江)をもその世界に違和感なく溶けこませる技量には感心した。少女によって実現される光(色)と影と音のコラボレーションは嫌みなく可愛らしく、また、それが Vampillia の妖しさと同居することで、この作品独自の物語世界が構築されている。Vampillia の音楽の魅力を十分に伝えている点でも見事に「MOOSIC LAB」の要件を満たした優等生な作品である。(松本CINEMAセレクトスタッフ一同)

★酒井麻衣監督のこだわりが随所に感じられる。モノクロームの映像からカラーへの転換。スクリーンサイズ。Vampilliaの素晴らしい楽曲。レイ役の金子理江さんとカイト役の吉村界さんもすごく良い。金子さんはMOOSIC LAB2015を代表する女優だろう。しかし、道化師的な役割を演じるmicci the mistakeさんの、俳優とは少し違うミュージシャンならでは演技には驚いた。そして何となく伝わってくる、この映画に対する出演者の信頼感。シーンごとのそれぞれの役割を納得したうえで演じているという印象で、これは監督たちとスタッフそして出演者により深い議論があったためではないかと想像する。音楽とのコラボレーションという点でも申し分ない。傑作です。(井上経久/新潟シネ・ウインド)

★MOOSIC的な作品としては抜き出ていました。役者とミュージシャンの絡まりも、映像と音楽の絡まりも、モノクロスタンダードとパートカラーの マッチングにおいても、三拍子揃った非の打ちどころのない作品でした。しかし、光に満ちたファンタジックな世界は確かに魔法をかけたかもしれない けれど、゛いいにおいのする″その香りはどこにあったんだろうかな…。(家田祐明/K’s cinema)

★酒井麻衣のファンタスティックな世界は、作品ごとに着々と完成度が上がっている。特に酒井監督のカラフルな色彩感覚が「いいにおいのする映画」では魔法のように作用していて素晴らしく、Vampilliaの音楽とキャラクターは本作をダークファンタジーへと向かわせている。(山﨑花奈美/MOOSIC LAB札幌編主宰)